研究課題/領域番号 |
25287148
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中井 陽一 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 専任研究員 (30260194)
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研究分担者 |
渡部 直樹 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50271531)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | クラスターイオン / 原子分子物理 / 大気イオン化学 / 微粒子核生成 |
研究実績の概要 |
平成26年度に実施した研究成果は以下のようになる。 1.イオン移動管を用いたH3O+(H2O)nクラスターイオンの結合分子数変化に伴う反応平衡の観測について、クラスターイオンの生成領域に非飽和蒸気圧の水蒸気のみを入れ、H3O+(H2O)nクラスターイオンの逐次水分子付加・脱離反応平衡の生成領域に加えられた電場に対する依存性を調べた。電場がある場合に得られる反応平衡定数の対数は電場の2乗と一次の関係があり、電場の2乗に比例する項の係数は水蒸気圧力に対して強く依存することが判明した。さらにこれらの関係を検討することによって、比較的弱い電場がある場合の反応平衡について、当初予想をしていなかったが、経験的な有効温度と見なせる量を引き出すことができた。 2.イオン移動管を用いて、NO+イオンに水分子が結合するクラスターイオン生成の実験を行った。NO+イオンおよびNO+(H2O)n (n=1~3) のクラスターイオンの間で成立していると考えられる擬似的反応平衡について、非飽和蒸気圧の水蒸気のみを満たした移動管内部の電場を変えて測定を行った。その結果、クラスターサイズによって電場依存性の向きが異なるなど先行研究からの予想と異なる結果となった。温度などの条件を変えた測定から、この現象はNO+イオンの準安定電子励起状態が引き起こしている可能性が推測される。 3. 既存のRFイオントラップを用いて、イオンの捕獲やトラップ内でのイオン種の選別、イオンと中性気体分子の電荷交換反応など、予備実験を実施することでトラップ動作の必要技術の確認を行った。 4. 既存のRFイオントラップによる予備実験の結果を踏まえて、比較的密度の高い試料気体を導入することを念頭に置いて新たにRFイオントラップと生成されたイオンを分析する部分の設計・製作を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々がこれまで使用してきた移動管実験セットアップでの測定から、研究実績に記載したような当初予想していなかった研究成果が得られた。そのため、移動管実験セットアップを使用した実験を当初予定よりも多く行うようにした。その結果として、当初予定していた既存のRFイオントラップを用いた予備実験が少々遅れたが、最終的には計画していた新たなRFトラップの製作を開始することができている。
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今後の研究の推進方策 |
予備実験結果を踏まえて既存のRFイオントラップでは、まず炭素クラスターを用いたクラスターイオンと気体分子との反応実験を行い、さらにその結果を踏まえて、水和クラスターイオンと気体分子との各種反応の観測を試みる。新たに設計・製作を開始したRFイオントラップでは、稼動テストと改良を引き続き行い、トラップ内部に比較的密度の高い試料気体を導入した条件化でイオンと気体分子の反応を観測する。さらに、水和クラスターイオン生成反応の観測を試みる。 また、RFイオントラップ装置に適用できるクラスターイオンの生成方法の検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
主には、イオン移動管およびイオントラップに使用することを念頭にした新イオン源の検討を計画していたが、その検討を行った結果、新イオン源はRFイオントラップ装置に適用できるようなクラスターイオンの生成方法を中心に検討・開発を続けることになったこと、また、研究遂行に必要な消耗品費および交換部品費としての使用を想定していたが、その費用が想定より少なかったこと、これらの理由により、当初予定よりも使用額が少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
既存のRFイオントラップを用いたクラスターイオンと気体分子との反応実験の消耗品費、新たに設計・製作を開始したRFイオントラップの稼動テストと改良の必要費用、イオンと気体分子の反応、水和クラスターイオン生成反応の実験を進める上で必要な物品費に使用することを考えている。また、RFイオントラップ装置に適用できるようなクラスターイオンの生成方法の検討・開発に使用することも考えている。
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