研究課題
基盤研究(B)
H25年度の進捗は、以下のような概要である。1. 分析方法の最適化:13C-安定同位体トレーサーを用いたアーキアおよびバクテリアの生きている指標とされる極性脂質(IPLs)およびその分子レベル同位体比、分子内同位体比の分析技術確立に加え、クロロフィル-aなどの色素化合物、新奇の極性脂質を新たに湿式手法で応用して、質量分析・同位体質量分析法の最適化を検討した。2. 深海底での現場実験:深海底での現場培養実験には、航海計画(研究支援母船、有人あるいは無人潜水艇)が必要であることから、西太平洋縦断調査航海において、培養器の設置・短期培養の回収を行った。レファレンス試料の回収には成功し、分子レベルでの分析評価を行った。深海現場でのオペレーションで堆積物採取の際に、試料の一部損失が生じたため、ラベル試料での検証が出来なかった。3. 代謝経路マップと生合成経路のモデル化:アーキアのアミノ酸合成経路のうち、ピルビン酸ファミリーアミノ酸族である分岐鎖アミノ酸(特にバリン、ロイシン、イソロイシン)について、代謝経路の検討を行った。まず、正確な抽出、分離、精製を行うために様々なイオンペア剤の導入を検討した。それにより、イオンペアクロマトグラフィー/電子スプレーイオン化質量分析法およびコロナCAD検出法の最適化を行い、分析化学系の国際誌に投稿した(査読中)。次に、分岐鎖アミノ酸の安定同位体比の系統的な解析を行い、アミノ酸合成経路とイソプレノイド鎖前駆体(プレカーサー)の分子的リンケージの解明に向けて研究を着手した。
2: おおむね順調に進展している
学会での発表を行い、引き続き、専門誌(論文)での公表に向けて、準備を進めている。H25年下半期に研究専任スタッフ1名の着任があった。研究実績の概要として、分析の最適化、深海底での現場実験(海洋・極限環境生物圏領域、野牧研究員との共同研究)、代謝マップと生合成経路のモデル化をおおむね順調に進められた。対外的な共同研究として、オランダ王立海洋研究所、北海道大学低温科学研究所、九州大学理学部、東京大学新領域研究科らの研究者と研究成果を専門誌に公表した。
H25年度の進捗の中で、新しい研究の萌芽性が見えてきた面があり、次年度以降は併せて研究統括する予定である。特に、ピルビン酸ファミリーアミノ酸族である分岐鎖アミノ酸(特にバリン、ロイシン、イソロイシン)の地球化学的意義について、代謝経路について注意深く研究を進める。
次年度の人件費の積算予定額との調整のため、一部繰越しの措置を行った。次年度の人件費補填として調整する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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