研究課題/領域番号 |
25287151
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星野 真弘 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90241257)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 降着円盤 / 粒子加速 / 角運動量輸送 / 磁気リコネクション / 磁気回転不安定 / 乱流 |
研究実績の概要 |
本年度は、空間2次元の赤道面でのMRIの非線形発展と、3次元MRIの大規模数値シミュレーションを行い角運動量輸送および高エネルギー粒子加速を調べることを目標とした。
まず赤道面でのMRIについては、一様系では標準的なMRIの不安定成長はおきないことがわかっているが、密度勾配があると不安定成長することを簡略化した線形理論計算で見出していた。この線形理論では、密度勾配が弱いという仮定を導入したが、密度勾配の強い場合も理解するために、線形固有値解析をおこない不安定性を調べ、密度勾配の関数として赤道面でのMRI不安定を理解した。この理解の下で、2次元MHDシミュレーションを行うことで非線形発展および乱流発生について考察した。
次に3次元MRIについては、Shearing Box Boundaryの3次元コード開発を行い、大規模計算を実施した。電磁流体近似のMRIで得られていた角運動量輸送(いわゆるShakura-Sunyaevのαパラメター)よりも、無衝突系でのMRIのほうが約10倍から100倍程度大きな輸送を担うことを見出した。この原因として、磁気リコネクションにともない作られる温度異方性が、磁場散逸の効果を抑制して、強い磁場が生成されていることを見出した。また粒子加速については、磁気リコネクションがチャンネル流の領域でランダムな場所で時間的にも間欠的に起き、乱流リコネクションによる加速が進行している可能性が明らかになってきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤道面での密度勾配中での不安定性については、線形固有値解析とMHDシミュレーションを行い、不安定の成長にともなう乱流発生について新しい知見を得た。現在論文を執筆中である。
また3次元MRIの研究についても、計画通りに3次元PICシミュレーションコードの開発をおこない、MRIの大規模計算を行った。その結果、MRIの飽和レベル(またはαモデルにおける角運動量輸送率)が、温度異方性を有する磁気リコネクションに大きく左右されることを突き止めた。この重要な成果は、ジャーナル誌に発表した(M. Hoshino, Angular momentum transport and particle acceleration during magnetorotational instability in a kinetic accretion disk, Physical Review Letters, 2015 DOI:10.1103/PhysRevLett.114.061101)
|
今後の研究の推進方策 |
無衝突系でのMRIは温度異方性が大きな役割を果たしていることが明らかになってきたので、最終年度は、これまでの成果を温度異方性の緩和過程に着目して、理解をさらに深めていくこととする。具体的には、微分回転している円盤で増幅されるMRIダイナモ効果が作る温度異方性がどのようにして緩和していくのか、また磁気リコネクションの発生に伴う温度異方性がどのように磁場散逸にフィードバックを与えるかを、3次元PICコードによるMRIの大規模数値計算で調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
紙媒体ではなく布に印刷できるポスター発表用大型カラープリンターの導入を検討していたが、ラニングコストがかなりかかることがわかり、費用対効果の観点から、従来からの引き続き紙媒体のプリンターを使うことにしたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
高額の備品は検討していないが、研究室で使用するカラープリンターを導入する予定である。
|