宇宙における降着円盤は重力回転系での普遍的構造であり、円盤ガスが中心天体に降着して莫大な重力エネルギーが開放されていることはよく知られている。一方、円盤ガスの効率よい降着メカニズムの理論的理解は長らく未解決であったが、1991年ごろから電磁流体近似のもとで、磁場の張力を介したプラズマと波動の角運動量交換過程を取り入れることで、効率よい降着が可能であることが議論されてきた。本研究では、従来の電磁流体近似の枠組みを超えて、プラズマ運動論の効果を取り入れることで、さらに効率のより降着が可能になることを研究した。
降着円盤では磁気回転不安定が主要な役割を果たすが、動径方向の磁場成分は、微分回転(ケプラー回転)によって引き延ばされることで、磁場強度が増幅される。一方増幅された磁場は、磁気リコネクションによって散逸されるが、磁場の増強(ダイナモ作用)とリコネクション散逸のバランスにより降着円盤での平均磁場強度が決まる。その結果磁場を介した角運動量輸送と降着率が規定される。
我々は粒来から使われている粒子計算に加えて流体近似のもとで圧力テンソル6成分の時間発展を記述する計算コードを独自に開発し、それらを用いて無衝突系降着円盤の角運動量輸送を調べた。運動論効果を取り入れることで、磁気リコネクションの発達段階で圧力非等方成分が作られ、そのプラズマ自身が磁気リコネクションの成長度を弱めるので、磁気回転不安定の非線形段階での平均磁場強度が大きくなり、降着率がこれまでの流体近似に比べて10倍程度大きくなること見出した。
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