研究課題/領域番号 |
25287152
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
荒巻 光利 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50335072)
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研究分担者 |
吉村 信次 核融合科学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (50311204)
寺坂 健一郎 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (50597127)
戸田 泰則 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00313106)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光渦 / ドップラー分光 / レーザー冷却 / 強結合プラズマ |
研究概要 |
これまで,ドップラー分光で得られる速度の情報が,レーザーの入射方向に制限されることは原理的に避けられないものとして受け入れられてきた.しかし,特異点光学等の分野で利用されている,光渦と呼ばれる螺旋状の等位相面をもつ電磁波の伝搬モードを利用することで,この制限を克服できる可能性がある. 平成25年度は,当初計画に沿って空間光位相変調器(SLM)を用いて,トポロジカルチャージの大きな光渦を発生させるための光源を開発した.光源には外部共振器型半導体レーザー(ECDL)を用いた. ECDLの出力を,SLMに表示したホログラムに入射し,光渦を発生させる.ホログラムの再生光を非球面レンズで結像し,ピンホールにより1次の回折光を取り出す.光渦をドップラー分光に用いる場合,回転方向の感度を向上させるには,出来るだけトポロジカルチャージが大きな光渦を用いた方が有利となる.ホログラムを変更することで,試験的にトポロジカルチャージが1から10までの光渦を発生させた.さらに,光渦と平面波を干渉させることで光波断面内の位相変化を確認した.トポロジカルチャージに対応した数の干渉縞が得られており,所望の次数の光渦が生成されていることが確認できた.また,光渦の波長掃引に同期して光渦画像を記録する測定系を構築し,光渦吸収分光計測に必要な2次元吸収分光測定の準備を整えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定に沿った光渦光源の開発に成功し,さらに2次元吸収分光計測系の開発も完了しており,おおむね研究は順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
・光渦を用いたドップラー分光法の研究 光渦を光源として用いたアルゴンプラズマのドップラー吸収分光を行う.得られる吸収スペクトルには,視線方向だけでなく,周方向および径方向のドップラー効果が含まれる.本研究では,光渦によるドップラー分光と平面波によるドップラーフリー分光を組み合わせることで,これら多自由度に対するドップラー効果を分離抽出する方法を確立する. ・光渦とレーザー冷却プラズマの相互作用に関する研究 イオントラップに閉じ込めたプラズマを光渦レーザーで励起し,既存のプローブレーザーでドップラースペクトルを観測する.レーザーによる励起で下準位密度が減少するため,励起レーザーの離調とドップラーシフトが一致した周波数にLamb dipと呼ばれるスペクトルの凹みが観測される.光渦で励起されたプラズマのLamb dipを観測することで,光渦による原子励起における,トポロジカルチャージやビームサイズ等の影響を詳細に調べる.また,光渦をレーザー冷却に応用し,プラズマの横方向自由度の直接冷却に関する基礎実験を行う.さらに,重粒子線の高品質化への応用を念頭に,光渦の軌道角運動量を利用した,プラズマの回転制御についても検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者が平成25年度末に他大学に異動となり、一部実験を平成26年度へと延期したため。 光渦分光用のミラーを購入予定。
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