平成28年度に実施した1)高強度レーザーと炭酸ガスクラスターの相互作用実験と同様の条件下でのシミュレーション結果の比較、2) 極限輻射プラズマ状態の長時間保持に関する外部磁場印加の効果 に関する研究 において現出した様々な複雑現象に対して、それらの素過程を明らかにする研究を実施した。その結果、以下の結論を得た。 1)高強度レーザーに照射された炭素クラスターのクーロン爆発による背景ガスの圧縮過程で形成される異種間プラズマの界面のダイナミックスと構造の全容を明らかにした。それらは、①クラスター膨張面と接触した背景ガスの圧縮と衝撃波形成、②接触面の交差とクラスターと背景ガスの異種プラズマの重なり領域および非線形波の出現、③背景ガスの圧縮面における希薄波の励起と伝播(構造の崩壊)、④クラスター膨張プラズマにおける2次的衝撃波構造の形成 によって特徴付けられるとともに、この希薄波の励起・伝播は上記相互作用実験で観測されている爆風波の特性を示すことも分かった。これらは、本実験系(レーザー照射された背景ガスとクラスターの系)が、希薄ガス中で爆発した高密度物体の普遍的なダイナミックスを模擬する系の資格を持っていることを示す。 2)上記1)の実験系に高強度背景磁場を印加した系を導入し、それに高強度レーザーを照射することにより、クラスターと背景ガス、および、背景磁場の複雑なリコネクション過程を通して、磁場で閉じ込められた高エネルギー密度プラズマが慣性時間を越えて高時間保持される現象を見出した。これは、反転磁場配位(FRC)と呼ばれる磁気閉じ込め状態が高強度レーザー実験によって生成されることを示しており、磁場閉じ込めプラズマの理解の進展につながるものである。また、これらの閉じ込め状態の実現に当たっては、トカマクで観測されるHモードと同様な電場形成が重要な役割を果たしていることを見出した。
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