研究課題/領域番号 |
25288003
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
尾関 寿美男 信州大学, 理学部, 教授 (60152493)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 水 / 磁場 / 磁気処理 / 酸素クラスレートハイドレート / 接触角 / ラマン散乱 / シリカゲル |
研究概要 |
研究期間中に,「水の磁気的相互作用」によって生成する水の未知の実体の構造を決定し,物性・機能との因果関係を解明する。そのため,1) 酸素ハイドレート類似構造や過冷却水類似構造の確証を得。2) 磁束変化が大気圧・室温でハイドレート構造を誘起する機構を解明する。3) 熱力学検討を加え,準安定状態を理解する。4) 酸素の溶存状態と磁気的相互作用との関係を解明する。5)酸素ハイドレートの構造と物性因果関係を明らかにする。6) 新しい磁気処理系を探索し,普遍化する。加えて,7)磁気処理効果は,広い物質系で種々の現象や構造変化としてあらわれる有用な方法であり,磁気処理された水(溶媒)は多様性のある試薬とみなされることを示す。 H25年度は,6つの課題の内1)~3)および7)について検討した。水の活量の指標として水蒸気圧を磁気処理しながら測定した。温度制御を0.1K以内にしたところ,0.05Torr以下の蒸気圧上昇しか観測されなかったが,更なる温度制御による検証が必要である。酸素バブリングによる酸素の溶存量や溶存状態の効果は検出できなかったが,これまで得られてきている磁気処理水の一般的現象―接触角の低下やラマン散乱における増加,これらにおけるメモリー効果や溶存酸素の必要性などはほぼ再現でき,酸素クラスレートハイドレートの存在が示唆された。溶存酸素濃度や水構造の制御のための高圧分光セルと高圧ポンプは目的に合う仕様の検討に手間取ったために次年度購入することにした。7)に関連して,ケイ酸ナトリウムをイオン交換してシリカゲルを調製する際に,水和プロセスが重要と思われるので,磁気処理水を用いてイオン交換してシリカヒドロゲルを調製した。初期のゾルの粘度を比較すると,磁気処理によって粘度が顕著に増加した。しかし,最終的なゲル化への効果やゲル構造への効果については未決である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終年度までに予定している7つのテーマの内,H25年度の計画では3つのテーマをとりかげることにしていた。しかし,実際には7)を加えて4つのテーマに着手し,水の活量,酸素効果,シリカゲル成長への磁気処理効果が確認できていることから,順調に推移していると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度には,モノづくりへの磁気処理効果を磁場効果と比較しながら検討するため,昨年度のシリカゲルの生成プロセスと調製したシリカゲルの構造・物性を調べる。また,動的磁気処理水とその急速凍結氷の赤外線吸収スペクトル(in-situ装置:新規購入)やラマン散乱スペクトルをその場測定するとともに,高圧光学セル(新規購入)を用いて,溶存酸素量依存性やクラスレートハイドレート様構造の有無を,広い周波数(数cm-1~7000cm-1)範囲にわたる分子振動解析や誘電分散・吸収を調べる。これによって,水および水溶液の水素結合やクラスター,酸素クラスレートハイドレートの誘電的性質,集団モード,結合振動モード,結合音,倍音を調べる。特に低波数の集団モードに注目する。(尾関,院生1)これらの分光測定と同時に,磁気処理による水の活量(蒸気圧)変化を検出するシステムの高精度化や温度制御の精密化を図り,磁気処理による蒸気圧変化を精度良く検出する(尾関,院生1)。さらに,酸素ハイドレート形成をアシストするテトラヒドロフランやキセノンを共存させ,磁気相互作用条件(磁場強度,処理時間,酸素濃度)の軽減効果を調べて,クラスレート生成助剤が酸素ハイドレート生成を促進するかを検討する。この一環として,磁場のデザイン(磁場強度や磁極の配列)がなされた磁気処理システムを永久磁石を用いて構築する。水や酸素以外の磁気処理系の探索を磁場中表面張力測定装置などによって実施する(尾関,院生2)。
|
次年度の研究費の使用計画 |
溶存酸素濃度や水構造の制御のための高圧分光セルと高圧ポンプは目的に合う仕様の検討のための予備実験などに手間取ったために次年度購入することにした。 消耗品:高純度酸素や一酸化窒素ガス,新規磁気処理系探索のための試薬を購入する。分光用およびNMR用セルを購入する。高圧ライン製作のための部品費を計上する。 備品:高圧状態の水の状態やハイドレート生成を調べ,高圧磁気処理によるモノづくりを検討するために,高圧顕微セル(20MPa;シンコーポレーション・PC-20-200)と高圧電動ポンプ(200MPa;シンコーポレーション・AP-200)を購入する。 旅費:成果発表のための学会(MAP6など)に参加するための旅費を計上する。 その他:超伝導マグネットの1万時間メンテナンスの費用を計上する(約50万円)。
|