研究実績の概要 |
ケイ酸の重合過程へ外場として磁場印加したときの効果や磁場に暴露した純水(磁気処理水)中でのシリカゲル生成過程の解明を目的として,29Si NMRへのケモメトリクスを適用して定量的に検討した。磁場中でのシリケート水溶液からのシリカゲル形成を29Si NMR, 粘度, 窒素吸着により測定した。29Si NMRの多変量解析によるスペクトル分解を行い3つの純成分のスペクトルと濃度プロフィールに分解した。これらの成分はそれぞれオリゴマー、ポリマー、マイクロゲルに帰属した。6 Tの磁場はポリマーの形成とマイクロゲルへの重合反応を促進した。一方で、オリゴマーとマイクロゲルの構造は大きくは影響されなかった。また、磁場は粒子成長とシラノール基間の相互作用を抑制し、0 T に比べて粘度を減少させる傾向が見られた。このような磁場効果は磁気配向やポリマー、マイクロゲルの水和によると推定した。 亜鉛イオンの配位子としてトリアゾール(Taz)とシュウ酸(Oxac)を用いて新しい多孔性配位高分子 [Zn2(Taz)(Oxac)2]・(H2O)2.5を合成したのち,適度な前処理によって残した細孔中の吸着水と二酸化炭素の吸着による相互作用で形成される化学種を、真空脱気のみで除去することによって5倍の細孔容量をもつ新しい細孔形成に成功した。また,このPCPは磁場中合成によって,モルフォロジーを大きく変化させるだけでなく,二酸化炭素吸着能を高めるとともに,細孔の疎水化,細孔直径の均一化をもたらすなど,磁場による細孔制御にも展開した。 これらはいずれも水が重要な役割を果たしており,特に磁場との相互作用が物質の構造や性質に影響する際立った例である。
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