研究課題/領域番号 |
25288009
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
根岸 雄一 東京理科大学, 理学部, 准教授 (20332182)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | チオラート保護金クラスター / 魔法数金クラスター / 異原子置換効果 / 安定性 / 3金属元素化 |
研究実績の概要 |
チオラート保護Au25クラスター(Au25(SR)18)は、極めて安定なクラスターであり、さらに、フォトルミネッセンス、レドックス挙動、光学活性、触媒活性などのバルク金とは異なる物理的/化学的性質を示すことから、新規機能性ナノ物質として大きな注目を集めている。これらのクラスターにおける異原子置換効果を解明することは、これらの高機能化に基づく新たな物理的/化学的性質を有する金属クラスターの創製という観点から非常に興味深い。本年度は、Au25(SR)18を2種類の異種元素にて置換した、チオラート保護3種金属Au24-nCunPdクラスターにおける置換効果について研究を行った。 Au24-nCunPd(SC12H25)18は、同時還元法により合成した。複数の構造解析より、生成物中に3種類の金属元素からなるAu24-nCunPd(SC12H25)18が含まれていることが確認された。こうしたチオラート保護3種金属25原子クラスターの合成については、我々の知る限り、これが初めての報告である。得られたクラスターを対象に、Au24-nCunPd(SC12H25)18におけるPd置換効果について検討を行った。その結果、2個までのCuが含まれるAu24-nCunPd(SC12H25)18 (n = 1,2)については、Pdの存在により、クラスターは安定性を向上させることが明らかになった。一方、こうした3金属元素化は、含有Cu数に応じて異なる影響を与え、とりわけCuを5個以上含むクラスターに対しては、逆にクラスター生成を困難にすることも明らかになった。Au25(SR)18の異原子置換効果の解明は、それらの高機能化手段の確立に繋がると期待される。本研究より得られた知見も、Au25(SR)18への新たな物理的/化学的性質の付与において一つの設計指針になり得ると期待する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題研究では、チオラート保護金属クラスターの高機能化手段確立を目的としている。本年度は、異原子に置換効果について研究を行い、3種金属25原子クラスターの合成に初めて成功し、それらクラスターにおける異原子置換効果を明らかにすることに成功した。得られた知見は、Au25(SR)18への新たな物理的/化学的性質の付与において一つの設計指針になり得ると期待される。このことから、現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
金ナノクラスターは生体物質の官能基を特定する生体診断粒子として期待されている。こうした粒子として使用する為には、配位子に生体物質と結合性の良いペプチドを使用することが必要となるが、ペプチドチオラートに保護されたクラスターは、クラスター同士の間でも凝集を起こしてしまうことが明らかにされている。次年度研究においては、ペプチドチオラートを限られた数だけ含むクラスターを精密に合成することで、一分子で生体診断粒子となりうるナノ物質を創製する。具体的には、まず凝集を起こさないチオラート(疎水性チオラート)で保護されたAu25(SR)18を合成した後、配位子交換反応により一部のチオラートをペプチドチオラートに置き換える。合成したAu25(SR)18-n(SRpep.)nの水への溶解度や、生体物質との結合性、及びクラスター同士の凝集性を評価する。これらの実験を行うことで、粒子像イメージングや蛍光イメージングにより生体物質中の官能基の位置を特定できる、生体診断粒子として働くナノ物質を創製する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の研究内容を考慮すると、配分額よりも物品費に多額の金額がかかることが予想されるため、一部の物品費を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した物品費は次年度の試薬購入代に充てる。
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