研究課題/領域番号 |
25288012
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
信定 克幸 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 准教授 (50290896)
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研究分担者 |
安池 智一 放送大学, 教養学部, 准教授 (10419856)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近接場光 / 光触媒 / ナノ光応答 / 分子物理 / 計算物理 |
研究実績の概要 |
当該研究課題の主たる目的の一つである実時間・実空間光励起電子ダイナミクス法のプログラム開発は、平成26年度までに順調に進み、平成27年度は平成26年度に引き続き、開発したプログラムを用いて実在系ナノ構造体の光励起電子ダイナミクスのプロダクトランを中心にして研究を進めた。具体的な研究成果は以下である。近接場光と電子の相互作用の結果、近接場光励起ダイナミクスでは、二次の高調波成分による光励起が本質的に起こることを明らかにした。これは、通常の光励起による二光子励起過程と同様の二次の非線形光学応答であるが、そのメカニズムは根本的に異なり、高調波成分を用いると効率的に励起ができる。この結果は、広いバンドギャップを持つ酸化チタンを用いた光触媒において、効率的に可視光を使った2倍波励起ができることを意味している。また、近接場光の磁場成分を利用して、物質加工ができることを実験グループとの共同研究によって見出した。これは、当該研究で進める機能物質の理論設計に対して、実際に実験室レベルで機能物質を実現する際に重要な技術となる。その他の成果としては、固体表面吸着分子系の光物性を、界面の電子状態に注目して明らかにした。更に、触媒や光機能物質として期待されている、金チオラートクラスターの構造安定性や光物性を明らかにした。金コアとその周りにあるリガンド(チオラート)の結合様式や光応答の解明が重要であるが、従前の研究では電子構造の解析が殆どであり、必ずしも光物性が理解されていない状況にあった。当該研究では、光(外場)に対する、コアとリガンドの界面電子状態の応答を詳細に解析することによって、金チオラートクラスターの光物性を明らかにした。担持金属クラスターの触媒作用に関する研究も行った。以上、プロダクトランが順調に進み、12報の学術論文を報告し、多数の国内外の招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光と物質の相互作用の理論及びその理論に基づく数値計算プログラムの開発が順調に進み、特に平成27年度は、実在系を対象としたナノ光応答ダイナミクスの研究成果が多数出た。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き数値計算プログラムの高度化を進めつつ、最終年度の平成28年度は実在系物質を対象とした可視光応答光エネルギー変換機能物質の理論設計の研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
数値計算プログラムの開発が予想以上に進んだため、購入を予定していたHPCサーバーでのプログラムの高度化やプロダクトランよりも、当該研究の主たる課題の一つであるスーパーコンピューターでの実機稼働が必要なプロダクトランを優先し、研究成果を出すことに力点を置いたため。
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次年度使用額の使用計画 |
数値計算プログラムの高度化や、研究室HPCサーバーでの実機稼働に適したナノ構造体の光励起電子ダイナミクスの計算を行う。
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