研究課題/領域番号 |
25288014
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山口 祥一 独立行政法人理化学研究所, 田原分子分光研究室, 専任研究員 (60250239)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 和周波発生 / 界面 / 非線形感受率 / 分子配向 / 埋もれた界面 / 複素位相 / バルク / 電子共鳴 |
研究概要 |
和周波発生(SFG)分光法は,界面の分子のスペクトルを選択的に与える方法として広く用いられている.従来のSFGは和周波光の強度を測定する方法である.試料界面からの和周波光の強度を,標準試料(例えば水晶)からのそれで規格化することにより,二次非線形感受率χ(2)の絶対値の自乗|χ(2)|2を得ることができる.|χ(2)|2スペクトルには3つの欠点がある.(1) 分子の上下の向きを表すχ(2)の符号の情報を持たない.(2) 吸収スペクトルと比較可能な正しいラインシェープを与えない.(3) 分子数密度に比例しない.我々は,これらの欠点を克服する新しい方法,ヘテロダイン検出和周波発生(HD-SFG)分光法を開発し報告した.HD-SFGはχ(2)の実部と虚部を分離して与える方法である.これまでに,HD-SFGは,空気/液体界面,空気/固体界面,真空中の固体表面に適用され,従来法では分からなかった界面の物理化学が次々に明らかにされている. HD-SFGのこれまでの適用範囲は,界面を挟む2つのバルク相のうちの1つが空気または真空である“埋もれていない”界面に限られていた.両側を光学的に濃厚なバルク相に挟まれた“埋もれた”界面には,HD-SFGは適用されていない.埋もれた界面では,入射光と和周波光の電場の複素位相が片側のバルク相の厚さと屈折率に依存し,結果的にその複素位相の因子と界面のχ(2)の積が測定量として得られてしまう.正しい界面のχ(2)を得るには,その因子を除去してデータを補正する必要がある.そのような補正は技術的にとても困難なため,埋もれた界面のHD-SFGはこれまで手つかずであった. 申請者は,バルク相の厚みの精密測定と電子共鳴のHD-SFGを組み合わせて補正を精密に行ない,等方的な固体と液体のバルクに挟まれた埋もれた界面のχ(2)スペクトルの決定に初めて成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記した通りの成果を上げることが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,埼玉大学に異動して,新研究室を立ち上げる.そのため,来年度は計画通りには進まないかもしれない.その分は,再来年度に巻き返しを図る.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の実験では,膜厚センサーを用いて,液体の膜の厚みを精密に決定した.昨年度に限っては,この膜厚センサーを業者から一ヶ月ほど借用することによって,実験を行った.借用したのは,この膜厚センサーが本当に機能するかどうか,確信が持てなかったためであった.そのため,膜厚センサー購入にかかる費用を繰り越すこととなった.結果として,この膜厚センサーは十分に機能した. 繰越した基金は、物品費として使用する.
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