研究実績の概要 |
本年度当初の交付申請書の研究計画に沿い、以下の結果を得た。1. Fe触媒による脂肪族グリニャール試薬のα,β,γ,δ-不飽和エステルへのδ-選択的付加反応を、ジエニルや各種置換メチルグリニャ―ル試薬で検討したが、好結果は得られなかった。/2. α,β,γ,δ-不飽和エステルやアミドへのアリールグリニャール試薬の付加反応で、鉄触媒に光学活性リガンド(例えばDiop、Binap、あるいはBenzPなど)を共存させ検討したが、光学活性な付加体は得られなかった。/3. Fe触媒によるアリールグリニャール試薬のEE、EZ、またはZE-α,β,γ,δ-不飽和エステルへの付加反応では、従来のEE型だけでなく、EZあるいはZEのエステルでも反応が進行した。後者の中間エノラートとMeIの生成物は、EE基質による立体選択性から向上しなかった。/4. 鉄触媒とメチルグリニャール試薬によるγ,δ-エポキシ-α,β-不飽和エステルのメチル置換反応を鍵とする(+)-ジンコホリンの合成を検討し、その主要フラグメントの入手を完了した。/5. 前項のエポキシドの反応を、新たにγ,δ-アジリジノ-α,β-不飽和エステルに適用し、同様に選択的なメチル置換体の合成が出来た。/6. 鉄塩触媒下でi-PrMgClをω-ヨード-α,β,γ,δ-不飽和アミドに作用させ、ハロゲン-メタル交換を経て(cis-アルケニル)シクロプロパンを得た。これを銅触媒で行うと、逆に(trans-アルケニル)シクロプロパンが得られた。また、銅触媒下で同様にi-PrMgClとω-ヨード-α,β-不飽和スルホンまたはニトリルの反応で、官能基を損なわずシクロプロパンが得られた。上記の項目1~5および6は、本年度の交付申請書の研究計画の項目①~⑤および⑥+⑦にそれぞれ対応する。
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