研究課題/領域番号 |
25288019
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
遠藤 恆平 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (70454064)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機化学 / 触媒反応 / 立体選択的 / 有機金属錯体 / 元素戦略 |
研究概要 |
複数の活性点を有する触媒の開発および、その触媒機能について研究を進めると同時に、安価な典型金属元素を用いる新規反応の開発に取り組んでいる。①複数の活性点を有する触媒として銅原子とアルミニウム原子を有する光学活性な錯体を用い、不斉共役付加反応による4級不斉炭素原子の構築を実現した。原料として不飽和ケトエステルを用いたとき、化学選択的に4 級炭素原子構築反応が進行し、連続的な環化反応により光学活性フラノンを得 ることに成功した。光学活性フラノンを得る手法は2例のみであり、本研究成果は世界初の一般的手法となる(現在、論文投稿中)。②フッ素原子が置換した原料に対する不斉共役付加反応により、トリフルオロメチル基とメチル基が置換した4級不斉炭素原子の構築にも世界で初めて成功した(論文投稿中)。③原料として非環状共役ジエノンを用いると、化学選択的に1,4-付加反応のみが進行することを見出した。環状ジエノンを用いた例はよく報告されているが、非環状ジエノンを用いる例は稀である(論文投稿準備中)。さらに本触媒機能の開拓に向けた研究にも継続的に取り組んでいる。④有機亜鉛試薬を用いる連続的な炭素―炭素結合形成/切断反応の開発に成功した。炭素―炭素結合切断を経る反応の多くは遷移金属元素を触媒とすることが多いが、コストの面で問題があり実用性はない(論文掲載済み)。⑤ヒドラゾンアミドを触媒として用いることで、連続的な炭素―炭素結合形成/切断反応によるカルボニル化合物への付加反応を達成した(論文掲載済み)。生成物の構造多様性が改善され、現在さらなる応用展開に着手している。⑥その他に、ジボリルシリルメタンとハロゲン化アリールのカップリング反応が、パラジウム触媒/酸化銀/水酸化カリウムを用い ることで効率よく進行することを見出した。複数の金属原子を有する触媒の有用性を示唆した(論部掲載済み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応開発について特に順調に研究が進んでいる。当初の申請書に記載したように、複数の金属原子を有する錯体が効果的な触媒として機能し、反応開発に成功した。また、触媒構造を構築する新しい配位子の合成にも取り組んでおり、今後の研究推進に寄与すると考えている。設計している触媒が従来法とは異なり特殊であることから、その合成に手間取っているが、基本となる原料の合成には成功しているため、最後の詰めに取り組んでいる段階である。さらに、新たな触媒機能を見出す目的のもと、典型金属原子を用いる炭素ー炭素結合切断法を開発し、論文として報告した。現在までメカニズムに関する知見に乏しいため、その研究にも取り組んでいる。一方で、申請書に示した通り、複数の金属原子を取り込む鋳型骨格の構築にも成功している。現時点で最大12個の金属原子を取り込むことが可能となった。12個の金属原子から構築される金属クラスターは、クラスターのなかでも特に高い触媒機能を有することが報告されている。現在は、その固定化、および安定化に向けた骨格構築、および触媒としての活用に向けて開発に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに見出した反応についてのメカニズムについて研究を進める一方で、論文としてまとめるよう収束させていく。①複数の金属原子を有する錯体触媒については、触媒を反応溶液中で調製しており、質量分析測定にて存在を確認しているが、通常大気中では不安定で分解しやすいことから、その構造解析には取り組めていない。現時点で、不安定な錯体の取り扱いは容易ではないという判断から、その錯体を調製する上で用いている骨格の誘導化に取り組み、安定な状態での錯体の取り出しを模索している。②有機亜鉛試薬を用いる炭素―炭素結合切断反応の開発では、メカニズムに不明瞭な点が残っている。特に重要な、炭素ー炭素結合を切断する過程が解明されていない。これまでに想定していたメカニズムとは、まったく異なる可能性が示唆されており、これまでに知られていない典型金属原子の反応性が含まれているのではないかと考えている。そのメカニズムの解明が、典型金属原子を触媒として用いる、さらなるブレイクスルーにつながると考えている。③複数の金属原子の有機分子鋳型を活用する触媒開発につなげる。現時点で金属原子の数選択的な取り込みには成功しつつあるが、取り込み後のクラスター化が重要となる。クラスター化による不安定化が予想されるため、クラスターを保護した状態での取り出しが必須と考えている。現在、その安定化法について、過去の類例を参考に研究を進めている。
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