研究課題/領域番号 |
25288025
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 さやか 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (10361510)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 複合材料・物性 / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
結晶性多孔体(ゼオライトや多孔性配位高分子など)は、分子やイオンの凝縮・輸送・変換機能を有し、基礎から実用まで研究が盛んである。申請者は、分子性イオンの複合化による多孔性イオン結晶の合成を行い、既存の結晶性多孔体と異なる機能性を報告してきた。イオン結晶は、原料イオン種の溶液中における複合化により得られ、合成が簡便である。しかし、等方的かつ長距離まで働くイオン結合により構築されるため、構造予測や精密制御(細孔の径、形状、次元性や体積、細孔壁の性質など)が困難である。本研究では、イオン結晶のポストシンセシスによる構造の精密化と高機能化を検討する。平成26年度はイオン結晶の構成アニオン(ポリオキソメタレート)に酸化還元活性な元素(モリブデン)を埋め込み、外部トリガー(還元剤、酸化剤の添加)により吸着点(アルカリ金属イオン)の数の制御及びそれに伴うガス吸着能(水蒸気や二酸化炭素)の制御に成功した。アルカリ金属イオンの取り込みは、セシウム>ルビジウム>カリウムの順であり、水和半径の序列と一致した。また、アルカリ金属の取り込みは電子の細孔内拡散と協奏的に進行しており、生体のPCET反応(proton coupled electron transfer、光合成などのエネルギー伝達に関わる)や電池の電極反応(例.Li+と電子の同時拡散)と比較しつつ、紫外可視吸収スペクトル及び原子吸光測定を用いて機構解明を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に行った「塩基の添加によって配位子を脱離させて細孔空間を二倍程度に増加させる」とは異なるアプローチで、平成26年度は「構成イオンに酸化還元活性な元素を埋め込み、外部トリガー(還元剤、酸化剤の添加)による吸着点の数の制御」に成功し、論文発表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は平成26年度に引き続き、酸化還元活性な元素の活用による多孔性イオン結晶のポストシンセシスを行い、より高選択的な吸着機能の発現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額は小さい。平成26年度3月分の消耗品の額がなかなか決定しなかったため残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
残額は消耗品(試薬など)として使用する。
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