研究課題
混合配位子間非共有結合を白金錯体内に導入することにより,混合配位子錯体の安定性が増すことを利用して,非共有結合を持たないシスプラチン等の臨床白金抗がん剤と同等以上の高い抗がん効果を示し,かつ低副作用の錯体開発に成功した.また,非共有結合である芳香環スタッキングを有した錯体の薬物動態には,細胞内取込の容易さや腸肝循環が特徴的に見られ,非共有結合導入効果がドラッグデリバリー等の薬剤設計に有用なことが認められた.同様にIP6リン酸を持つ白金錯体は骨への集積を示した.これらの知見を基に,光照射による抗がん剤治療(PDT)に使用されるポルフィリン環にピリジン側鎖と白金抗がん錯体シスプラチンやトランスプラチンを導入し,標的である核酸との間に非共有結合が可能なPDT剤(光増感剤)を合成した.この白金錯体導入PDT剤は白金を持たない従来のPDT剤よりも高い一重項酸素発生能を有し,さらにPDT剤のポルフィリン環に金属イオンGa(Ⅲ)やIn(Ⅲ)を持たせて水溶性にしたところ一重項酸素発生能が一層高くなった.合成された白金と金属(Ⅲ)を持つPDT剤は,光照射下では標的である核酸を高効率に攻撃し,非常に抗がん活性が高いことががん細胞アッセイから示された.しかし,光非照射下では抗がん効果が低いかほとんどなく,低副作用の優れたPDT用抗がん剤であることが明らかとなった.事実,担がんマウスを使ったPDT治療実験において優れた抗がん治療結果を得ることができた.この一因として腫瘍への蓄積性が認められた.このように白金抗がん剤に非共有結合を導入することにより,高活性,低副作用,標的へのデリバリー可能な錯体を作成することができ,非共有結合の導入は創薬の有用なツールとなることが示された.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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