研究課題
基盤研究(B)
1) 癌治療用貴金属錯体の開発:アミノ糖を8-ヒドロキシ-2-キノリンカルバルデヒドと反応させて得たイミンを配位子とする貴金属(Pt, Pd)錯体の合成とキャラクタリゼーションおよびX線結晶構造解析を行った。イミン配位子は三座で金属に配位し、残り1座は塩化物イオンが占める平面四配位錯体[M(GlcN=qnO)Cl](M = Pd, Pt)である。これら錯体の抗癌性を胃癌細胞について試験したところパラジウム錯体が臨床に用いられているシスプラチンと同等あるいはそれ以上の良好な抗癌活性を示すことが明らかとなった。シスプラチンは脱離基の塩化物イオンを2個有するバイファンクショナル錯体であり、一方今回の錯体は脱離塩化物イオンが1個のモノファンクショナル錯体であり、抗癌性の作用機序の解明にとり興味深い知見である。2)光線力学療法用糖連結In(III)ポルフィリンの開発:グルコース連結In(III)およびZn(II)ポルフィリンの合成とキャラクタリゼーションを行った。Inポルフィリンは亜鉛ポルフィリンより、高い一重項酸素生成を有することが判明した。InポルフィリンのCOLO 679癌細胞に対する光毒性は、現在保険適用されているLaserphyrinRと比較して優れたPDT効果を示した。3)光線力学療法用糖連結フラーレンの開発:単糖アジド誘導体の1,3-双極子付加反応により、窒素を介した糖鎖連結フラーレン1を合成した。また、フラーレン酸クロリドと糖のアミン誘導体との反応により、炭素を介した糖鎖連結フラーレン2を合成した。各糖鎖連結フラーレンについて、一重項酸素の生成効率およびレーザーフラッシュフォトリシス過渡吸収測定などを用いて一重項酸素生成ダイナミクスを明らかにした。ヒト子宮頸癌細胞についてPDT効果を検討した。炭素を介した2は、窒素を介した1に比べ4倍低い値を示し、強い光毒性を示した。
2: おおむね順調に進展している
本研究目的の癌診断と治療の両機能を有する機能分子の開発の根幹である、良好な抗癌性および優れたPDT効果を発現する機能分子の開発に成功したことから、おおむね順調に進展していると判断した。
25年度の成果を基盤に、癌治療機能のより高性能化と診断機能の付与を目指して研究を推進する予定である。
マウスによる抗癌性試験を外国機関(台湾科学技術研究院)に依頼したため、試験費用の支払い時(H26年3月末)のレート変動に対応できるよう余裕をみて予算を確保しておいたためおよび研究が順調に進展したためH26年度予算に加えて使用の予定
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