研究課題/領域番号 |
25288028
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
矢野 重信 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 客員教授 (60011186)
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研究分担者 |
片岡 洋望 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40381785)
中井 美早紀 関西大学, 工学部, 准教授 (40527115)
野元 昭宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (60405347)
鳴海 敦 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (60443975)
赤司 治夫 岡山理科大学, 付置研究所, 教授 (30221708)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光医療 / 癌 / 糖鎖 / 材料 |
研究実績の概要 |
1)光線力学療法用グルコース糖連結クロリンのPDT効果:グルコース連結フッ化クロリンは、癌細胞のみでなく、消化管間質の細胞から発生するGastrointestinal stromal tumor (GIST)に対しても、グルコース連結クロリンPDTが優れた抗腫瘍効果を発揮することを見いだした。膜上皮から発生する早期の食道癌、胃癌に対しては内視鏡的な切除術が主流であるが、粘膜上皮の下層から発生するGISTに対しては通常、内視鏡的切除は困難であり、グルコース連結クロリンPDT はGISTに対する新しい治療法として臨床応用が期待される。 2)光線力学療法用マンノース糖連結クロリンのPDT効果:癌間質に存在し増殖や転移を促進するとされている腫瘍会合性マクロファージを標的としたマンノース連結クロリンについて検討した。癌細胞に対してマンノース連結クロリンは予想外にもグルコース連結クロリンと同等、糖が連結していないフッ化クロリンよりも10-40倍の殺細胞効果を示し、強力にアポトーシスを誘導することが明らかとなった。共焦点レーザー顕微鏡による観察で、マンノース連結クロリンは細胞質内の特にリソソーム、小胞体に取り込まれた。In vivo試験ではマンノース連結クロリンPDTがグルコース連結クロリン、クロリン、コントロールに比べて有意に強力な腫瘍縮小効果を示した。 3)糖連結Ir(III)発光性錯体の合成:グルコース連結Ir(III)錯体の合成とキャラクタリゼーションを行った。水への溶解性について検討したところ、2 mM程度の水溶液の調製は容易とみなされる。錯体を水溶液に調製し、窒素雰囲気化および酸素飽和条件にて蛍光測定を行ったところ、発光量は大きく減少した。すなわち、酸素応答性が明らかとなり、PDT効果ならびにPDD効果を有するバイファンクショナル化合物として、今後の展開が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) 本研究目的の癌診断と治療の両機能を有する機能分子の開発の根幹である、優れたPDT効果ならびにPDD機能を発現する機能分子の開発に成功したことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 25年度ならびに26年度の成果を基盤にして、癌治療ならびに癌診断機能を有する光機能性ハイブリッド体の開発と機能評価を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が順調に進行したため、消耗品非の節約ができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
光機能性物質の開発のための薬品費(消耗品)および成果発表費(旅費)に使用する。
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