研究課題
最近Feイオン42個からなり、単分子として最大のスピン量子数を持つシアノ架橋ナノケージを開発した。この錯体は2価Feイオンと3価のFeイオンからなる混合原子価状態をとっており、金属間電荷移動などの動的な物性を示すことが期待される。本研究では、このナノケージの配位子を変えることでダイナミックな電子状態を有するナノケージを開発することを試みた。特に、2価Feイオンと3価のFeイオン間のエネルギー差を小さくし、外場に応答して電子移動を起こしやすい物質を開発するために、電子吸引基を導入した配位子を用いて42核錯体の開発を試みた。さらに、電子移動やスピン転移を示す42核錯体の開発を試みた。電子吸引基を導入した3種類の配位子を合成し、得られた配位子とFe(CF3SO3)2、Li[Fe(Tp)(CN)3]を混合することによって単結晶を得た。その結果いずれの配位子を用いてもケージ状構造を有する42核鉄錯体[{Fe(Tp)(CN)3}24{Fe(H2O)2}6 {FeL(H2O)}12X6]・xH2Oが得られることがわかった。IRスペクトル測定、UV-Vis-NIRスペクトル測定などにより、いずれの物質もFe(II)-CN-Fe(III)の電子状態を有していること、及び2価Feイオンと3価のFeイオン間に強磁性相互作用が働いていることがわかった。また、42核錯体はいずれも近赤外領域に強い吸収バンドを有していた。この吸収はFe(II-低スピン)からFe(III-高スピン)への電荷移動吸収バンドに帰属される。3つの錯体について金属間電荷移動吸収バンドを比較したところ、配位子の電子吸引性が増すごとに吸収ピークが長波長シフトしていることが明らかとなった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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