研究課題/領域番号 |
25288034
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小林 健二 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40225503)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子自己集合 / 超分子 / 分子認識 / カプセル / 水素結合 / 動的共有結合 |
研究概要 |
分子自己集合に基づくキャビタンドカプセルの研究テーマとして、(1)水素結合に基づくヘテロカプセルの超分子カプセルポリマーへの展開、(2)キャビティー拡張動的ホウ酸エステル結合カプセルの構築とナノ保護容器、(3)水素結合に基づく光応答性分子集合カプセルの構築と開閉制御、の3つを設定している。平成25年度は、テーマ1とテーマ2について、研究を行った。 テーマ1:各種スペーサーを有するダンベル型ピリジルキャビタンドとダンベル型フェノールキャビタンド(モノマーユニット)の合成を達成した。興味深いことに、(CH2)11-O-C6H4-CC-CC-C6H4-O-(CH2)11をスペーサーとして用いた場合には、超分子カプセルポリマーを形成せず、ゲスト包接水素結合ヘテロカプセルをコネクターとする大環状二量体を定量的に形成することがわかった。これは、環状主鎖の原子数が108員環の超分子ジャイアントリングである。速度論支配の共有結合生成ではこのようなジャイアントリングを定量的に合成することは不可能であり、この結果は熱力学支配の超分子科学(分子集合体化学)の成せる業である。 テーマ2:テトラホウ酸キャビタンドとビス(カテコール)エタンから成る動的ホウ酸エステル結合カプセルは、ゲストとして2,6-ジアセトキシ-9,10-ビス[4-(4-ジデシルアミノフェニルエチニル)フェニルエチニル]アントラセンを定量的に包接すること、この包接体はフリーゲストに比べ、光酸化耐性が約6倍、二光子吸収特性が約2倍増加することが分かった。また、キャビティー拡張型カプセルとしてテトラホウ酸キャビタンドとビス(カテコール)ブタンから成る動的ホウ酸エステル結合カプセルの構築に成功し、この拡張カプセルは、ジアリールアセチレン系、ターフェニル系、テトラセン系ゲスト分子を包接できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テーマ1:当初計画の各種スペーサーを有するダンベル型ピリジルキャビタンドとダンベル型フェノールキャビタンド(モノマーユニット)の合成を達成した。(CH2)11-O-C6H4-CC-CC-C6H4-O-(CH2)11をスペーサーとして用いた場合には、予想に反して超分子カプセルポリマーを形成しなかったが、ゲスト包接水素結合ヘテロカプセルをコネクターとする大環状二量体(超分子ジャイアントリング)を定量的に形成することがわかったことは大きな成果である。何故なら、通常の共有結合生成ではこのようなジャイアントリングを定量的に合成することは不可能だからである。 テーマ2:当初計画どおり、これまでの分子集合カプセルでは包接不可能な十字形の構造を有するBPEA誘導体の包接を達成し、また、本カプセルが光酸化耐性を付与するナノ保護容器として機能することを実証した。二光子吸収特性が約2倍増加したことも、これまでの分子集合カプセルでは達成できない大きな成果である。また、当初計画どおり、キャビティー拡張型カプセルを構築し、拡張前のカプセルでは包接できなかった大きなサイズのゲスト分子群を包接できるようになった(拡張前カプセル:ビフェニル、アントラセン系ゲスト分子、拡張カプセル:ジアリールアセチレン系、ターフェニル系、テトラセン系ゲスト分子)。
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今後の研究の推進方策 |
1.水素結合に基づくヘテロカプセルの超分子カプセルポリマーおよび超分子ジャイアントリングへの展開:(1)次年度は、スペーサーにポリエチレングリコール等のポリマーを有するダンベル型ピリジルキャビタンドとダンベル型フェノールキャビタンドを合成し、それらの1:1分子自己集合が超分子カプセルポリマーを形成するか、それとも、普遍的に超分子ジャイアントリングを形成するか、あるいは、それらの混合物になるかどうかを検証する。(2)また、次年度は、主鎖をポリスチレンとして、ピリジルキャビタンドユニットを側鎖に含むランダム共重合体の合成を行い、次々年度に行う「水素結合性ヘテロカプセルユニットを超分子架橋部位とする超分子架橋ポリマーの構築」の研究に備える。 2.キャビティー拡張動的ホウ酸エステル結合カプセルの構築:(1)さらに大きな拡張リンカーを有する動的ホウ酸エステル結合カプセルの構築を達成し、それらカプセルのゲスト包接分子認識能を精査する。(2)次年度は、新たに、ビス(カテコール)エタンリンカーに不斉点を導入してキラルな動的ホウ酸エステル結合カプセルの構築を行い、不斉分子認識(ラセミ体ゲストの包接光学分割、アキラルなゲストの包接キラリティー誘導)への展開を図る。 3.水素結合に基づく光応答性分子集合カプセルの構築と開閉制御:(1)光応答性分子集合カプセルのユニットとなるテトラキス(p-カルボキシフェニルアゾ)カリックス[4]アレーンおよびテトラキス(p-ヒドロキシフェニルアゾ)カリックス[4]アレーンの合成を達成し、そのカプセル形成ならびにゲスト包接能、および、光応答性について検討する。(2)デンドロン-アゾベンゼン側鎖を有するカリックス[4]レゾルシンアレーンの合成を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度への繰越額は¥893,077である。次年度および次々年度(最終年度)の予算は¥270万円ずつの少額のため、次年度以降の消耗品費として、本年度敢えて¥893,077残した。 繰越額は、次年度以降の消耗品費として使用する。
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