研究課題/領域番号 |
25288035
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤塚 守 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (40282040)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子素子 / 超高速分光 / 電子移動 / ラジカルイオン |
研究実績の概要 |
高励起状態や励起ラジカルおよび励起ラジカルイオン等の反応中間体励起状態は短寿命ながら高い反応性を示すことが予想される。これら反応中間体励起状態の反応性および反応ダイナミクスを超高速分光により明らかにすることを本研究課題では目的としている。当該年度ではイミド類ラジカルアニオン励起状態からの電子移動の検討を行った。 ナフタレンジイミドやペリレンジイミドは良好な電子受容体であることから広く研究されている。これらのイミド類はラジカルアニオン状態で明瞭な吸収帯を可視および近赤外領域に示すことから、これら吸収帯をフェムト秒レーザーで選択励起することにより、励起ラジカルアニオンの励起状態物性および電子移動反応性を検討した。特に、ナフタレンジイミドに電子受容体をスペーサーを介して結合したダイアッド分子を二系統合成し、電子移動の距離依存性および自由エネルギー変化依存性を検討した。化学還元によるナフタレンジイミドのラジカルアニオンの生成後、選択励起により励起ラジカルアニオンから電子受容体への電子移動過程を実測することに成功した。その結果、電子移動の距離依存性は中性分子電荷分離過程より小さいベータ値であらわせることを確認した。また、電子移動の自由エネルギー依存性を検討し、電子移動における電子カップリングおよび再配向エネルギーを導出することに成功した。これらの値は分子軌道計算と比較することで妥当性を確認し、従来中性分子で報告されている値と同程度であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では励起ラジカルアニオンからの分子内電子移動速度の距離依存性ならびに自由エネルギー変化依存性を明らかにすることに成功した。本研究は励起ラジカルアニオンからの電子移動過程についてこれら物性を明らかにした最初の例であり、これにより、励起ラジカルイオンからの電子移動の特性が明らかになった。また、得られた成果は順調に論文として発表している。
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今後の研究の推進方策 |
今後においては従来の研究結果に基づき以下の研究を予定している。 (1)励起ラジカルアニオンからの電子移動の更なる検討。 これまでに、ナフタレンジイミドの励起ラジカルアニオンからの電子移動を検討したが、さらにこれらの結果に基づきペリレンジイミドなどの他のイミド類ならびに電子受容体として有用なフラーレン類の励起ラジカルアニオンからの電子移動について検討を行う。特にこれらの電子受容体を用いることにより再配向エネルギーの低下による電子移動の高速化が期待できることから電子移動過程の詳細が明らかになることが期待される。 (2)励起ラジカルカチオンからのホール移動の検討。 これまでの研究により励起ラジカルアニオンからの電子移動が明らかになりつつあるが、さらに励起ラジカルカチオンの反応性について検討することを予定している。この検討により、励起ラジカルカチオンの諸物性が明確になることが予想される。具体的にはオリゴチオフェンのラジカルカチオンの検討を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究を進めていく上で、必要に応じ研究費を執行した。このため、研究計画時の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め当初予定通りの研究を進める。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額となった研究費は、当初研究計画の達成を目指すための物品費として使用する予定である。
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