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2014 年度 実績報告書

人工細胞膜中でのフラーレン誘導体の位置制御による光線力学活性の向上

研究課題

研究課題/領域番号 25288037
研究機関広島大学

研究代表者

池田 篤志  広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90274505)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワードフラーレン / 光線力学活性 / リポソーム / 多糖 / マクロファージ
研究実績の概要

本年度は、昨年度に引き続き種々のフラーレン誘導体をシクロデキストリン・フラーレン誘導体錯体からリポソーム膜内へ移動させることによるリポソームへの導入効率や、作製したフラーレン誘導体含有リポソームの安定性について検討した。その結果、フラーレン誘導体の置換基の親水性が大きすぎる場合に、うまくリポソーム内に導入されないことが、1H NMR スペクトルより明らかになった。一方、置換基が疎水性の場合、リポソーム内に導入できることが明らかとなった。しかし、疎水性の高い置換基の場合、リポソーム膜表面近傍にフラーレン誘導体が存在しないため、昨年度達成されたシクロデキストリン・フラーレン誘導体錯体自身が持つ光線力学活性に比べ、その活性が十分に高いとは言えなかった。
そこで、リポソームに変わる可溶化剤として、多糖であるアクアβを用いた。アクアβなどの多糖はマクロファージに対して特異性があることが知られており、光線力学化成を付与できれば、免疫不全によるリュウマチなどへの治療が期待できる。そこで、まず各種フラーレン誘導体をアクアβにより水溶化することを試みた。その結果、カチオン性のフラーレン誘導体は可溶化されなかったが、中性とアニオン性のフラーレン誘導体は高濃度で可溶化できた。次に、これらのフラーレン誘導体・アクアβ錯体を用いて光線力学活性を評価した。マクロファージであるRAW細胞を用いて検討したところ、光線力学治療に適した波長領域である600 nm 以上の光の照射でアニオン性のフラーレン誘導体が非常に高い活性が示された。この理由はアニオン置換基とアクアβの多糖がRAW細胞表面を認識したためと考えられ、今後この原因を究明する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

可溶化剤としてリポソームを用いてフラーレン誘導体を可溶化することはうまくいっていないが、可溶化剤として他の化合物、例えばシクロデキストリンや多糖など用いることで、従来未修飾のフラーレンC60やC70では不可能であった、光線力学活性に適した長波長領域である600nm以上の光照射で高い光線力学活性を実現できている。また、フラーレン誘導体の置換基の違いによって、その光線力学活性が大きく異なることが明らかとなっている。このことは、可溶化剤のみではなく、フラーレン自身に機能性置換基を導入することで光線力学活性を向上できることを示している。

今後の研究の推進方策

今後は、シクロデキストリンや多糖以外の可溶化剤として高分子ミセルや高分子ナノゲルを可溶化剤として用い、フラーレン誘導体の機能を最大限に引き出せる可溶化剤を模索する。これらの可溶化剤を用いれば、より多くの種類の置換基を導入したフラーレン誘導体を可溶化できると考えられ、その機能化が大いに期待できる。

次年度使用額が生じた理由

工学部の耐震工事に伴い、研究室が仮移転先に移動した。仮移動先は場所が狭いため、当初予定していた機器、器具、試薬などの購入を控える必要があった。来年度は耐震工事も終了し、新しい場所にて研究室を立ち上げることができるため、本年度購入を控えていた物品の購入を行うことができる。

次年度使用額の使用計画

来年度5月中旬以降、新しい研究室に入り次第、物品の購入をスタートさせる。現在、当大学・先端物質科学研究科(バイオ)黒田先生の研究室で行わせていただいている細胞実験を、新しい研究室で行えるように器具や機器の購入を行う予定である。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Anti-Inflammatory Effect of Water-Soluble Complex of 1’-Acetoxychavicol Acetate with Highly Branched beta-1,3-Glucan on Contact Dermatitis2015

    • 著者名/発表者名
      J. Li, Y. Aizawa, K. Hiramoto, E. Kasahara, D. Tsuruta, T. Suzuki, A. Ikeda, H. Azuma, T. Nagasaki
    • 雑誌名

      Biomed. Pharmacother.

      巻: 69 ページ: 201-207

    • DOI

      10.1016/j.biopha.2014.11.026

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Thermodynamic Stability of [60]Fullerene and γ-Cyclodextrin Complex in Aqueous Solution: Free Energy Simulation.2014

    • 著者名/発表者名
      S. Mieda, A. Ikeda, Y. Shigeri, W. Shinoda
    • 雑誌名

      J. Phys. Chem. C

      巻: 118 ページ: 12555-12561

    • DOI

      10.1021/jp5029905

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stability of Lipid-Membrane-Incorporated Azobenzene and Pyrenes in Water2014

    • 著者名/発表者名
      A. Ikeda, T. Hida, T. Nakano, S. Hino, K. Nobusawa, M. Akiyama, K. Sugikawa
    • 雑誌名

      Chem. Lett.

      巻: 43 ページ: 1551-1553

    • DOI

      10.1246/cl.140595

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] [70]Fullerenes Assists the Formation of Phospholipid Bicelles at Low Lipid Concentrations.2014

    • 著者名/発表者名
      A. Ikeda, K. Kiguchi, T. Hida, K. Yasuhara, K. Nobusawa, M. Akiyama, W. Shinoda
    • 雑誌名

      Langmuir

      巻: 30 ページ: 12315-12320

    • DOI

      10.1021/la503732q

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 疎水性平面芳香族分子含有リポソームの調製と安定性の評価2015

    • 著者名/発表者名
      芦澤健吾・日野彰大・杉川幸太・池田篤志
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会(2015)
    • 発表場所
      千葉県船橋市
    • 年月日
      2015-03-28 – 2015-03-28
  • [学会発表] 交換反応法を用いたフォトクロミック分子含有リポソームの調製2015

    • 著者名/発表者名
      日野彰大・池田篤志・芦澤健吾・杉川幸太・菊池純一・塚本真未・安原主馬
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会(2015)
    • 発表場所
      千葉県船橋市
    • 年月日
      2015-03-28 – 2015-03-28
  • [学会発表] 交換反応法を用いたポルフィリン含有リポソームの調製2015

    • 著者名/発表者名
      池田篤志・日野彰大・杉川幸太・菊池純一・塚本真未・安原主馬
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会(2015)
    • 発表場所
      千葉県船橋市
    • 年月日
      2015-03-28 – 2015-03-28
  • [学会発表] フラーレン含有pH 応答性ナノゲルの合成とその機能2015

    • 著者名/発表者名
      久保厚喜・杉川幸太・池田篤志
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会(2015)
    • 発表場所
      千葉県船橋市
    • 年月日
      2015-03-28 – 2015-03-28
  • [学会発表] DMe-β-シクロデキストリンが引き起こすリポソームの崩壊とそのメカニズムの解明2015

    • 著者名/発表者名
      岩田昂・日野彰大・菊池純一・平尾岳大・灰野岳晴・杉川幸太・池田篤志
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会(2015)
    • 発表場所
      千葉県船橋市
    • 年月日
      2015-03-28 – 2015-03-28
  • [学会発表] NMR によるフラーレン誘導体-シクロデキストリン錯体の分子内―分子間交換の検討2015

    • 著者名/発表者名
      前智也・平尾岳大・灰野岳晴・杉川幸太・池田篤志
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会(2015)
    • 発表場所
      千葉県船橋市
    • 年月日
      2015-03-28 – 2015-03-28
  • [学会発表] 交換反応法を用いたフラーレン含有ナノゲルの合成2015

    • 著者名/発表者名
      杉川幸太・久保厚喜・池田篤志
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会(2015)
    • 発表場所
      千葉県船橋市
    • 年月日
      2015-03-27 – 2015-03-27
  • [学会発表] 近赤外光による光線力学治療のためのアップコンバージョン蛍光粒子含有ナノハイブリッドの作製と評価2015

    • 著者名/発表者名
      清水勇夫・石田兼基・池田篤志・冨田恒之・片桐清文・犬丸啓
    • 学会等名
      第53回セラミックス基礎科学討論会
    • 発表場所
      京都府京都市
    • 年月日
      2015-01-09 – 2015-01-09
  • [学会発表] フラーレン誘導体の水溶化とその光線力学活性2014

    • 著者名/発表者名
      池田篤志
    • 学会等名
      第8回有機π系シンポジウム
    • 発表場所
      佐賀県佐賀市
    • 年月日
      2014-11-22 – 2014-11-22
    • 招待講演
  • [学会発表] フラーレンおよびフラーレン誘導体を用いる光線力学治療薬を目指して2014

    • 著者名/発表者名
      池田篤志
    • 学会等名
      第 2 回バイオ関連化学シンポジウム若手フォーラム
    • 発表場所
      岡山県岡山市
    • 年月日
      2014-09-10 – 2014-09-10
    • 招待講演
  • [学会発表] 重水素化シクロデキストリンの合成と錯形成2014

    • 著者名/発表者名
      池田篤志・肥田知浩・松尾貴史
    • 学会等名
      第 12 回ホスト・ゲスト化学シンポジウム(HGCS2014)
    • 発表場所
      東京都目黒区大岡山
    • 年月日
      2014-05-31 – 2014-05-31
  • [図書] 『光』の制御技術とその応用 実例集2014

    • 著者名/発表者名
      池田篤志
    • 総ページ数
      601
    • 出版者
      株式会社技術情報協会編
  • [図書] 生物模倣技術と新材料・新製品開発への応用2014

    • 著者名/発表者名
      池田篤志
    • 総ページ数
      702
    • 出版者
      株式会社技術情報協会編
  • [備考] 広島大学大学院工学研究院応用化学専攻応用有機化学研究室

    • URL

      http://ikeda-lab.p2.weblife.me/

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公開日: 2016-06-01  

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