研究課題/領域番号 |
25288039
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
椎木 弘 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70335769)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子鋳型 / バイオセンサ / ナノ粒子 / 分子探針 / 表面分析 |
研究概要 |
特定の官能基や化学種と相互作用する分子を化学修飾した金ナノ粒子を用いた走査型および透過型電子顕微鏡(SEM、TEM)あるいは走査型プローブ顕微鏡(SPM)観察により、バクテリア表面における化学的相互作用を詳細に調べることで、バクテリアの形状のモニターとともにバクテリア表面の化学構造を明らかにした。化学修飾した金ナノ粒子によりバクテリア表面の化学構造に基づいた標識が可能となることを利用して、バクテリア表面の官能基や化学種およびそれらの分布を金ナノ粒子の粒径に応じた分解能で可視化することに成功した。一方、SPM観察によりバクテリア表面で生じる化学的相互作用を調べることで、官能基や化学種に基づいた表面情報の詳細を明らかにした。 バクテリアに相互作用する部位を持つマトリクス構成分子の探索を行った結果、ピロールおよびチオフェン誘導体をモノマーとしたポリマーマトリクスがバクテリアと良好な相互作用を有することが明らかになった。また、それらのマトリクスに分散して存在するバクテリアの生存率が極めて高いことから、マトリクス材が優れた生体適合性を有することを示した。 バクテリアの電気化学的特性について詳細に調査を行ったところ、各種電極材料(金属や炭素)や電位範囲、pHや電解質などの測定条件により異なる電気化学特性が得られた。電位範囲および電解質の種類はバクテリアの生存状態にほとんど影響しないことがわかった。一方、電極材料は生存状態に大きく影響した。しかしながら、ポリピロールやポリチオフェン誘導体をマトリクスとして電極に固定化することで、それらの影響はほとんど見られなくなった。また、pHは中性領域が適正であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
特定の官能基や化学種と相互作用する分子を化学修飾した金ナノ粒子を用い、バクテリア表面における化学的相互作用を詳細に調べた。走査型および透過型電子顕微鏡(SEM、TEM)あるいは走査型プローブ顕微鏡(SPM)観察によると、化学種に基づいた金ナノ粒子の吸着が観察された。これらの手法により、バクテリア表面の化学構造を確認することができた。化学修飾した金ナノ粒子を用いることでバクテリアの形状とともに化学構造に基づいた標識が可能になり、バクテリア表面における官能基や化学種およびそれらの分布を利用した検出法の開発に関して有効な知見が得られた。 ポリピロールやポリチオフェン誘導体などのポリマーマトリクスは中性のpH領域で形成可能であり、重合とともに多くのバクテリアを取り込むことから、良好な相互作用を有することが確認された。また、それらのマトリクスに分散して存在するバクテリアの生存率が極めて高いことから、マトリクス材が優れた生体適合性を有することを示した。 電気化学測定において電位範囲および電解質の種類はバクテリアの生存状態にほとんど影響しないことがわかった。生存状態は用いた電極材料に大きく影響したが、ポリピロールやポリチオフェン誘導体などの適切なマトリクス材を電極表面に導入することにより、バクテリアの生存状態に影響しない電気化学系の確立が達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
化学修飾金ナノ粒子を用いたバクテリアの標識が可能になり、バクテリア表面における官能基や化学種およびそれらの分布を利用した検出法の開発に関して有効な知見が得られた。これらを基に、金ナノ粒子にバクテリア表面に存在する特定化学種と特異的に結合する分子を導入し、バクテリアの選択的な標識化について検討する。 電気化学測定において電位範囲および電解質の種類はバクテリアの生存状態にほとんど影響しないことがわかった。一方、電極材料は生存状態に大きく影響したが、適切なマトリクス材の導入により、バクテリアの生存状態に影響しない実験系の確立が達成できたため、バクテリアの電気化学的特性を利用した検出について、マトリクス材へのバクテリア鋳型の形成は当初計画に従って検討する。その際、ポリマーマトリクス材の生体適合性と導電性とを利用して、バクテリアの活性を電気化学的に評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
バクテリア表面の化学構造の解析について、当初計画では走査型プローブ顕微鏡(SPM)により詳細に行う予定であった。SPMによる基礎検討の段階で、分子を化学修飾した金ナノ粒子を用いることでバクテリアの表面情報が十分に得られ、さらに金ナノ粒子の粒径に基づいた詳細な情報の取得が達成された。これらに結果より、金ナノ粒子を用いた迅速な検出法の開発の可能性が新たに生じるなど顕著な成果が得られた。本年度の当初計画にあるSPMによる詳細な検討を要さず、カンチレバーや金線などの高額消耗品を必要としなかった。 金ナノ粒子を用いた迅速検出法の開発の可能性が新たに生じ、当初計画とともに遂行する必要が生じた。したがって、精力的な成果の取得を目指し、研究補助員の雇用による研究人員の拡充と成果報告のための旅費に使用する。
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