研究課題
危害要因であるグラム陰性菌,特に大腸菌や緑膿菌などをターゲットとしたバクテリア鋳型に形成について検討した。グラム陰性菌はリポ多糖類により構成される外膜に覆われており負のゼータ電位を示す。これに着目し,マトリクスとしてポリピロールなどの導電性高分子を適用した。マトリクスの電解重合過程において,ポリマー骨格に生じる正電荷によりバクテリアがドーパントとして惹きつけられ,モノマーがバクテリア表面の特定部位(官能基や化学種)と相互作用するとともに重合され,バクテリアを含むポリピロール膜が形成された。過酸化処理によるバクテリアのマトリクスからの溶出に伴う鋳型の形成について,走査型電子顕微鏡観察により確認した。電極表面にはバクテリアのサイズと同等の孔が観察された。得られた過酸化ポリピロール膜電極のバクテリア認識能を水晶振動子マイクロバランス(QCM)により評価した。テンプレートとして用いたバクテリアを含む溶液中において過酸化ポリピロール膜電極の質量増加に基づく共振周波数の減少が確認された。以上のことから,過酸化処理により電極表面に生じた孔はバクテリアの鋳型であることが推察された。そこで,本法を各種バクテリアに適用し,種々のバクテリアに選択的な鋳型電極の作製を行った。周波数変化を追跡することで各種鋳型膜によるバクテリア認識について評価したところ,いずれの場合も鋳型のテンプレートとして用いたバクテリアに対して高い選択性を示した。バクテリアの電気化学的検出の可能性について検討した。酸化還元活性を有する蛍光色素によりバクテリアを染色することで,電流応答に着目したバクテリアの定量が可能になった。さらに,バクテリア自身が持つ化学種の酸化電流の計測に成功した。この電流応答に着目した電気化学検出の可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
バクテリアが電気化学的に不活性であったため,電気化学的に活性な蛍光色素を標識として,標識の電気化学応答によるバクテリアの検出を目指した。蛍光色素の電気化学特性に基づいたバクテリアの識別および定量が可能になった。さらに,バクテリアの電気化学的評価について各種電極を用いて検討を行ったところ,電極の材質がバクテリアの電気化学応答に影響することがわかった。詳細については現在検討中であるが,バクテリア自身が持つ化学種の電流応答に着目した電気化学検出の可能性が示唆された。
バクテリア鋳型電極を用いてターゲットを微量に含む試料溶液からの分離,濃縮および検出法の開発を行う。特に,高感度な検出を目指して,電気化学テクニック(各種ボルタンメトリやアンぺロメトリなど)や測定条件(電位走査範囲や掃引速度,パルス幅など)の最適化による電気化学信号の増幅などについて検討し,実用レベルの検出限界を目指す。検出条件により鋳型の変質による選択性の低下が予測されるため,試料溶液の作製条件(pHや電解質)や電気化学条件についても最適化を行う。また,色素やナノ粒子などで標識することで,試料溶液中のターゲットの分離,濃縮状態を可視化を試みる。
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