研究課題/領域番号 |
25288041
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
吉田 幸大 名城大学, 農学部, 助教 (10378870)
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研究分担者 |
前里 光彦 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60324604)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コロネン / 多環芳香族炭化水素 / 電荷移動錯体 / 超伝導 / π-d相互作用 / 分子ローター / キャリア注入 / FET |
研究概要 |
課題1) 電荷移動型分子ローターの開発 溶液法により作製した4種の1:1コロネン-TCNQ誘導体電荷移動(CT)錯体の結晶構造解析に成功した。重水素化コロネンを用いて作製した同形CT錯体の2H NMR測定を行い、結晶構造と分子回転挙動の相関について知見を得た。共昇華法により、2種の新規2:1コロネン-TCNQ誘導体CT錯体の開発にも成功した。いずれもDDA型交互積層構造を有しており、DA型交互積層構造を有する1:1錯体との回転挙動の違いについて調査中である。 課題2) 超伝導体の開発 電解酸化法により、6種の新規コロネン陽イオンラジカル塩の開発に成功した。用いた陰イオンの価数は-1価~-3価、幾何対称性はOhもしくはTdと多彩であり、いずれの塩も分離積層構造を有している。分子回転を示唆する異方的な温度因子は室温でも観測されず、100Kまで構造相転移は観測されなかった。現在、ラマン分光測定からコロネン分子の価数評価を行っている。電気伝導性ならびに磁性測定も進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
課題1) 電荷移動型分子ローターの開発 TCNQ誘導体を用いたコロネン電荷移動(CT)錯体については、作製条件を再検討することにより良質単結晶を得ることに成功し、結晶構造を解くことができた。これにより、測定済みの固体NMRスペクトルからシミュレーションしたコロネン分子の回転挙動を、結晶構造(分子間相互作用)の視点から検討することが可能になり、分子回転挙動の理解が格段に進んだ。コロネン以外の多環芳香族炭化水素を用いたCT錯体の開発にも着手しており、良質単結晶育成のノウハウを着実に蓄積している。特に、分離積層(回転相)と交互積層(凍結相)が共存した新しいタイプのamphidynamic crystalの開発に成功している。 課題2) 超伝導体の開発 世界初のコロネン陽イオンラジカル塩の開発(Eur. J. Inorg. Chem., 印刷中)に続き、積層構造を有するコロネン陽イオンラジカル塩、磁性金属イオンを含むコロネン陽イオンラジカル塩、完全+1価コロネン陽イオンラジカル塩の開発に成功した。これらはいずれも世界初の例であり、超伝導体探索において不可欠なパラメータである、(1)π電子伝導経路、(2)共役π分子の価数、に関して重要なモデル物質と言える。良質単結晶の作製手法のノウハウも着実に蓄積しており、電気伝導性、磁性といった物性評価も順調に進んでいる。DFT計算を駆使した、ラマンスペクトルによるコロネン分子の価数評価方法の確立にも着手している。 以上の理由から、本研究課題は申請時の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
課題1) 電荷移動型分子ローターの開発 コロネン含有電荷移動(CT)錯体の良質結晶の育成には共昇華法が有用であることが判明したため、今年度は昇華条件の最適化を行いながら、主にTCNQ誘導体とのCT錯体の単結晶育成を行う。結晶構造、すなわち分子間相互作用と分子回転挙動の相関についてさらなる知見を得る。プロペラ型π共役分子デカシクレンや湾曲型π共役分子コランニュレンについても、共昇華法を用いたCT錯体の単結晶育成を推進する。 課題2) 超伝導体の開発 前年度、6種の新規コロネン陽イオンラジカル塩の開発に成功した。今年度はこれらの電子物性(伝導性、磁性)について詳細に検討し、圧力印加等による超伝導発現を目指す。前年度から引き続き新規コロネン陽イオンラジカル塩の開発を推進するとともに、類似するサイズ・幾何構造を有する異価数陰イオンを化学的にドーピング(バンドフィリング制御)することによる電子物性制御も試みる。DFT計算を駆使しながら、ラマン分光測定によるコロネン分子の価数決定法の確立も目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
少額であるため、次年度に繰り越すこととした。 試薬等の物品費として使用する。
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