研究課題/領域番号 |
25288042
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
瀬高 渉 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (60321775)
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研究分担者 |
山口 健太郎 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (50159208)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機能性有機分子 / 分子機械 / 有機典型元素 / 動的分子 / 構造有機化学 / 双極子配向制御 / 有機結晶 / 複屈折 |
研究実績の概要 |
本研究では、大規模かご型骨格の内部にπ電子系を架橋した分子を、結晶中でもπ電子系が1軸回転可能な「分子ジャイロコマ」として設計、合成し、結晶内部のπ電子系の回転運動や配向変化に伴う複屈折変化や誘電性を検討している。 本年度は、ベンゼン環を回転子とする分子ジャイロのかごサイズが異なる誘導体を合成し、回転ポテンシャルのかごサイズ効果や複屈折に及ぼす影響を確認した。その結果、かごサイズが増大するにつれ回転障壁が小さくなることをNMR緩和時間の温度依存性の解析により明らかにした。回転障壁のかごサイズ依存性は、理論計算によっても再現することができた。以上の結果は、米国化学会の専門誌上でfull paperとして報告した(J. Org. Chem., 79, 8288-8295 (2014).)。 また、かご側鎖とベンゼン回転子を連結している元素をゲルマニウムとする誘導体を新規に合成し、すでに報告済のケイ素誘導体と比較した。その結果、ゲルマニウム誘導体ではGe-C(Ph)結合長が伸長していることが単結晶X線結晶構造解析から明らかになり、ベンゼン環の回転障壁がケイ素誘導体よりも減少していることが示された。また、結晶複屈折の温度依存性は、ケイ素誘導体の結果と定性的に一致することを確認した。本研究成果は英国王立化学協会の専門誌上でfull paperとして報告した( RSC Adv., 4, 58624-58630 (2014).)。 さらにセレノフェン架橋分子ジャイロコマの結晶構造と複屈折変化について検討し、有機典型元素討論会で報告した。発表を担当した学生は、学生優秀講演賞を受賞した。さらに研究代表者は、米国で開かれた分子機械に関するワークショップでチオフェン架橋分子ジャイロの配向変化と複屈折性に冠する招待講演を行った。このように本研究については、内外の関連する研究者から高い評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、分子ジャイロコマのπ電子系回転子の結晶内における配向変化とそれに伴う複屈折変化および誘電性を研究対象としている。これまで萌芽的知見であったベンゼン架橋分子ジャイロの固体物性が、本年度検討した関連する誘導体の性質との比較により、構造と物性の対応が明確になった。つまり、関連する化合物について構造や物性をデザイン可能な状態に研究を進展することができた。
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今後の研究の推進方策 |
分子ジャイロの合成と構造物性相関研究において、さまざまな誘導体を設計することが可能になった。今後は、さまざまな誘導体で系統的に比較できるよう、研究を進展させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に携わる大学院学生数が増え、消耗品費など経常的に研究に必要な経費が増大すると予想したから。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き適正な執行に努める。
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