研究実績の概要 |
本研究では、大規模カゴ型アルキル骨格の内部にπ電子系を架橋した分子を、結晶中でもπ電子系が1軸回転可能な「分子ジャイロコマ」として設計、合成し、結晶内部のπ電子系の回転運動や配向変化に伴う複屈折変化や誘電性を検討してきた。 本年度は、すでに16族ヘテロ5員環であるフラン、チオフェン、セレノフェン誘導体について、固体中での環の回転運動とそれに伴う複屈折変化を系統的に比較検討した。研究成果は現在学術雑誌に投稿中である。誘電性についても検討し、双極子モーメントの大きな環を架橋した誘導体において、固体中の分子運動に由来するシグナルが観察された。現在詳細を検討中である。 このほか、ナフタレン架橋体について、様々な環サイズの誘導体を合成し、溶液中の環の回転障壁がカゴサイズに依存することを明らかにした(論文:J. Org. Chem., 80, 9959-9966 (2015))。また、ピレン架橋体では、カゴ側鎖の立体保護効果により、高濃度条件においてもエキシマー蛍光が観察されない特異な性質を明らかにした(論文:Org. Biomol. Chem., 13, 10511-10516 (2015).)。 研究代表者は、2件の国際会議での成果発表と1件の招待講演を行った。
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