研究概要 |
本研究は、触媒的C-H結合活性化を鍵とする新しい分子変換反応及び触媒系の開発により、明確に設定した標的化合物、すなわち、n型有機半導体材料として官能基化フラーレン及びその部分骨格を効率的合成し、優れたn型半導体の新機能を創出することを目的としている。平成25年度では、触媒的フラーレンの環化付加反応および非対称1,4-二置換フラーレン官能基化反応の開発を計画した。研究計画とおり、コバルト触媒とマンガン還元剤の存在下、フラーレン(C60)と種々の活性アルキルジブロマイドを用いると、様々な3員環および5員環から7員環までのフラーレンモノ環化誘導体が室温で効率的かつ高選択的に得られることを見出した。また、2価の銅触媒の存在下、モノ置換フラーレンのC-H結合と様々な1級および2級アミンが効率的に反応し、モノアミノ化1,4―二置換フラーレン誘導体が高収率かつ高選択的に得られることを見出した。様々な検討を行ったところ、本反応はアミンによるフラーレンモノラジカル形成と銅触媒によるアミンラジカル形成が同じ反応場で進行し、それに続くラジカルのカップリングにより進行することを明らかにした。さらに、パラジウム触媒存在下、オルトアルキニルアリールハライドとジアリールアルキンの分子間のクロースオバー環化反応がC-H結合活性化を経て進行し、二つの5員環骨格を有するπ共役系ジベンゾペンタレン化合物が高収率で得られることを初めて見出した。本反応において種々の反応条件を検討した結果、DBUとCsOPivの二つ塩基を同時に用いることが鍵である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度では、当初研究計画とおり、2価の銅触媒の存在下、モノ置換フラーレンのC-H結合と様々な1級および2級アミンが効率的に反応し、モノアミノ化1,4―二置換フラーレン誘導体が高収率かつ高選択的に得られることを見出した。本合成は選択的モノアミン置換をC60骨格に導入する初めての例であり、それにより様々な新規アミノ化フラーレンを簡便迅速に合成できる。この方法は米国化学雑誌Organic Letters(2014, 16, 620)に発表された。また、コバルト触媒とマンガン還元剤の存在下、フラーレン(C60)と種々の活性アルキルジブロマイドを用いると、様々な3員環および5-7員環フラーレンモノ環化誘導体が室温で効率的かつ高選択的に得られることを見出した。本方法は、米国化学雑誌Organic Letters(2013, 15, 4030)に発表された。さらに、フラーレン部分骨格構築方法の過程において、パラジウム触媒を用いた新規C-H結合活性化により二つの5員環骨格を有するπ共役系ジベンゾペンタレン骨格が容易に構築できることを見出した。この結果は当初の計画よりさらに進化した合成法であり、米国化学雑誌J. Am. Chem. Soc.(2013, 135, 10222)に発表された。
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