研究課題/領域番号 |
25288045
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
柴田 哲男 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40293302)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フッ素 / フルオロアルキル / ペンタフルオロスルファニル / ヨウ素 / ラジカル反応 |
研究実績の概要 |
H26年度の計画,即ち,ヨウ化フルオロアルカンをピリジン誘導体やシンコナアルカロイドなど窒素原子を持つ触媒を用いて,窒素―ヨウ素間のハロゲン結合を足掛かりに,ヨウ化フルオロアルカンを活性化させ,フルオロアルキル基を不斉かつラジカル的に導入する反応の開発に取りかかった。そもそもフルオロアルキル化反応は遷移金属や高価な試薬を用いるため,実用性・効率性の点において改善の余地がある。近年においてはルテニウムやイリジウム錯体に代表される可視光酸化還元触媒を用いた手法が活発に研究されている。我々は,ヨウ化フルオロアルカンのヨウ素部位をハロゲン結合で活性化させる目的で,アミン触媒を探索した結果,フタロシアニンやサブフタロシアニン等のπ電子を持つ環状色素アミンを用いた場合,アルケン及びヘテロ環に対するラジカル的フルオロアルキル化反応が容易に進行することがわかった。即ち,アルケン及びヘテロ環とヨウ化フルオロアルキル(CF3-IもしくはC8F17-I)を混合し,そこにフタロシアニンあるいはサブフタロシアニン,アスコルビン酸ナトリウムを添加し,白色LEDランプ(10 W)を光源として反応させたところ,ラジカル的フルオロアルキル化反応が首尾良く起こることを見つけた。本反応はフタロシアニンを触媒としてフルオロアルキル化反応を行った初の例である。フタロシアニン窒素によりヨウ化フルオロアルカンがハロゲン結合を通じて活性化された可能性があり,反応を精査している。次にもう一つの計画であるペンタフルオロスルファニル基の引力について調べることとした。市販の単純なペンタフルオロスルファニルベンゼンから,ペンタフルオロスルファニル基を持つ芳香族ヨウ素化物への変換合成は困難であったが,最終的に,様々な反応を組み合わせることにより,数種のペンタフルオロスルファニルーヨードベンゼン誘導体を合成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたヨウ化フルオロアルカンとアミン型触媒反応から,フタロシアニン類を用いたラジカル的フルオロアルキル化反応を見つけた。不斉反応への展開には至らないが,この基礎反応自体が初めてのもので,意義深い。また高価なルテニウム色素を用いないラジカル反応であることも興味深いと考えている。さらにハロゲン結合を誘因する新しい官能基としてペンタフルオロスルファニル基を選定し,その官能基を持つ数種のヨードベンゼン類の合成にも成功した。ハロゲン結合そのものを確認することには至っていないが,予定していた反応や化合物の合成に成功しているため,おおむね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は最終年度であるため,これまでに合成してきた含フッ素化合物によるハロゲン結合誘因力を計算化学を用いて考察する。また,合成した化合物群を用いた触媒反応を見出したい。フルオロアルキルラジカル反応にも成功したので,不斉触媒反応へと展開する。さらには,H25年度のペンタフルオロフェニル化合物,H26年度のペンタフルオロスルファニルフェニル化合物群を用い,ハロゲン結合のみならず様々な分子間相合作用の可能性も探り,研究期間終了後への展開も視野に入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が概ね順調に進んだため,謝金・人件費を節約出来,研究費の有効利用のため基金分のうちの一部を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
謝金・人件費に使用する予定だが,研究進捗に応じて,試薬代や物品費にする場合も考えられる。また,極めて良い研究成果が得られれば,世界に先駆けて,いち早くイニシアチブをとるため,成果発表旅費に使用することも考えている。
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