研究課題/領域番号 |
25288049
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森 敦紀 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90210111)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オリゴチオフェン / CHカップリング / 分岐状チオフェン / 太陽電池 / 鎖状オリゴマー |
研究概要 |
本研究では,鎖状および分岐状のオリゴチオフェン合成に関して,①チオフェン置換基に官能基をもつ誘導体でのCHカップリング反応,②分岐状オリゴチオフェンを利用した官能基変換反応の開発,③分岐状チオフェンから有機機能材料(色素増感太陽電池の創製),④新しいタイプの酸化的炭素-炭素結合生成反応の開発をめざして研究を遂行している。得られた,鎖状および分岐状のオリゴチオフェンの構造を各種分光学的な手法により明らかにし,続いて有機機能材料創製を視野に入れた,基礎物性の測定を溶液状態および薄膜状態でおこなった後に,実際にデバイスを作成して,太陽電池特性などを評価する。 平成25年度では,鎖状オリゴマーとしてチオフェン環側鎖にシロキサン基を導入したモノマーユニットの合成に成功した。また,カップリングにおけるニッケル触媒として,反応系中で生成可能な触媒前駆体金属化合物と配位子を組み合わせる系に実用的なものを見いだすことができた。 一方,分岐状オリゴマーに関しては,分岐状オリゴチオフェンの選択的な臭素原子導入法を検討し,選択的なブロモ化をおこなう手法の確立に成功した。この結果をもとに,分岐状オリゴチオフェンをモノマーユニットとするポリチオフェン合成などに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々のオリゴチオフェン合成において,反応を円滑に進行させるための触媒的カップリング反応の開発をおこなっているが,簡便な触媒調製法の確立に成功し,目的とする化合物の効率的合成が容易となっている。鎖状オリゴマー合成に関しては,新しい置換基としてシロキサン基を有するものの合成を可能とした。一方,分岐状オリゴチオフェンに関しては,合成したオリゴチオフェンデンドリマーに対して,臭素原子を入れる方法を確立することができた。今後は,得られた臭素化分岐状オリゴチオフェンに対して,さらなる官能基化を推進していくことができ,次年度以降の研究の進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
・分岐状オリゴチオフェンデンドリマーを骨格にもつ色素増感太陽電池の有機色素の合成と機能評価 平成25年度の検討において合成方法を確立した,ハロゲン化させたオリゴチオフェンデンドリマーに対して鈴木・宮浦カップリングにより色素官能基を導入する。電極上への吸着を可能とするためのシアノアクリレート基を,(酸化的)溝呂木・ヘック反応を利用して導入する。この反応が進行しない場合には,従来法Vilsmeyer反応,Knoevenagel反応の二段階反応で対応する。得られた有機色素の構造を,NMR, MS などの分析により明らかにする。得られた色素を酸化チタン電極上に担持し,太陽電池特性に関する機能評価をおこなう。 ・チオフェンCH結合での新しいタイプの炭素-炭素結合生成反応の検討 基質としてチオフェンのハロゲン化物以外の反応剤を用いて,炭素-炭素結合を形成する新しいタイプの反応開発をめざす。酸化的な溝呂木・ヘック反応,すなわち3-ヘキシルチオフェンに対して金属アミドなどの塩基を作用させて位置選択的な水素引き抜きをおこないチオフェン有機金属種を生成させ,種々の不飽和化合物との反応により溝呂木・ヘックタイプの反応を誘起する。遷移金属触媒の存在下,酸化剤を共存させることで酸化的な触媒反応をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請当初に予定していた,不活性ガス精製循環装置が予定していた実験の要求に対して適切であるかどうかの判断が,25年度の実験においては決定できないことが,当該年度にすすめていた実験の途中に明らかとなった。また,消耗品として予定していた触媒となる金属錯体や配位子についても,試行錯誤の後に最適なものを購入することを考えていたが,25年度内の実験において用いる触媒等は,計画していたものよりも安価であったため,これらの不活性ガス精製,循環装置および触媒用の金属錯体,配位子の差額から,未使用分が生じたため 26年度に実施する実験において利用する不活性ガス精製循環装置の最適機種を購入するとともに,当該年度に実施する触媒反応における,反応条件最適化や触媒反応機構の解明のために用いる,有機金属反応剤(およびその合成前駆体),錯体触媒を調製するための遷移金属化合物,配位子の購入に充当することを計画している。
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