研究実績の概要 |
今年度は水中バイオインスパイアードインドールプレニル化反応について精査を行った。ジアリル二リン酸(DMAPP)は生体成分の生合成において、C5単位(イソプレンユニット)を導入する重要な化合物である。我々は、DMAPPの水中での振る舞いに興味を持ち、トリプトファンとDMAPPもしくはその等価体を当量の酸存在下、撹拌した。その結果、天然物に見受けられるインドール部のN1, C2, C3, C5, C6, C7位がプレニル化された化合物をそれぞれ得ることに成功した。この結果は、水でプレニルカチオンが安定化され、加えて、水中均一系でFriedel-Craftアルキル化反応が進行したことを意味する。本反応は10gスケールでも問題なく進行し、グラムスケールで天然物合成に重要な中間体を得ることができた。得られたそれぞれのプレニル化誘導体から、N-prenylcyclo-l-tryptophyl-l-proline、 tryprostatin A、 及び B、, rhinocladin B及び A 、加えてterezine Dの合成を達成した。一連の反応は2つのフラスコで行われ、バイオインスパイアード反応を駆使した全合成である。また、本成果により、生合成における酵素の進化と役割について再考する必要性が示唆された。また、インドールの化学を展開する中で、天然物に多く見受けられるピロリジノインドリン構造の3位に芳香族を導入した際、酸を加えるだけで芳香族が2位に移動する進行する特異な転位反応を見出した。本反応では興味深いシクロプロパン中間体を経由している。
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