研究課題/領域番号 |
25288052
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
神原 貴樹 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90204809)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高分子半導体 / 導電性高分子 / 直接的アリール化反応 / 結合位置 / オルトメタル化反応 / 反応制御 |
研究実績の概要 |
本研究は、直接的アリール化反応が特定位置のC―H結合で効率よく進行するための活性点と反応場の構築を行い、結合位置が高度に制御されたπ共役高分子を合成する重縮合法を確立することを目的とする。 まず、指向性メタル化基(もしくは配向基)を組み込んだ芳香族モノマーの設計による結合位置制御の取り組みにおいて、カップリングパートナーに対する影響を確認した。昨年度は、配向基をピロール誘導体に導入し、Ru錯体触媒を用いた重合を行うことによって、ピロールのβ位のC―H結合での副反応が抑制され、結合位置が高度に制御されたπ共役高分子を合成した。本年度は、この重合におけるカップリングパートナーとしてチオフェン誘導体を用いて、重縮合反応における結合位置の制御に取り組んだ。その結果、この重合では、チオフェンユニットのβ位におけるC―H結合での副反応も抑制することができ、結合位置が高度に制御されたπ共役高分子が得られることがわかった。 望まないC―H結合での副反応を抑制する重合反応の構築においては、チオフェン誘導体の置換基の嵩高さと導入位置によって副反応が抑制できることを確認した。これは、置換基の立体障害によって、オルト位のC-H結合での副反応が抑制されるとともに、嵩高い置換基の導入によって主鎖ユニット間のねじれが生じ、C-H部位の反応性が制御できるためと考察した。また、チオフェンに導入する置換基の電子的効果と重合触媒系、特に溶媒との間に相関性があることを見出した。一方、モデル反応による直接的アリール化反応と副反応の経時変化を精査した。その結果、不均化反応によるモノマー同士のホモカップリング体の生成が確認された。この副反応は、触媒濃度を下げることによって不均化反応を抑制することで制御でき、構造の制御されたπ共役高分子の合成に有効であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
芳香族モノマーに指向性メタル化基を導入し、オルトメタル化反応を経由して重合を進行させる手法が、対象モノマーだけでなく、カップリングパートナーとなる芳香族モノマーのC-H結合における副反応も抑制できることを明らかにできた点は大きな進展といえる。これによって、指向性メタル化基の導入は、結合位置が高度に制御されたπ共役高分子の合成に効果的であることが明らかとなり、本研究の目的の一つは概ね達成できたと判断される。 一方、対象芳香族モノマーの反応性と重合触媒系、特に使用する溶媒との間に相関性が見出せた点は重要な知見と捉えている。対象モノマーとカップリングパートナーとなる芳香族モノマーの電子密度を考慮し、適切な触媒反応条件を選択することによって、指向性メタル化基を導入しなくても結合位置が高度に制御されたπ共役高分子を合成できる重縮合法が確立できる足掛かりが得られたものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
過去2年の成果に基づき、さらに探索試験研究を進めるとともに、本重縮合反応の制御と拡張を図る。芳香族モノマーの分子設計においては、結合位置制御に適切な置換基の導入と精査を行うとともに、対象モノマーの拡張を図り、指向性メタル化基の導入が、結合位置を高度に制御したπ共役高分子の合成に広く活用できるように検討を進める。一方、制御系重合触媒反応の構築では、重合反応条件とモノマーの選択のポイントを明確する検討を進め、望まないC-H結合への保護基の導入や指向性メタル化基の導入などを行わずに結合位置が高度に制御されたπ共役高分子を合成できる手法を確立する。さらには、高分子半導体として注目度の高い芳香族モノマーをターゲットとした重合を並行して検討することで、この合成手法が、有機電子・光デバイス素材となる高分子半導体材料の開発手段として意義のあることを明らかにする。
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