研究課題/領域番号 |
25288054
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大久保 政芳 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (30031131)
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研究分担者 |
竹内 俊文 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70179612)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 制御リビングラジカル重合 / 機能性高分子微粒子 / 乳化重合 / 蓄熱カプセル粒子 / タンパク質認識微粒子 |
研究実績の概要 |
1)山子教授らが提案した有機テルルを触媒とする制御リビングラジカル重合(CLRP)を乳化重合系に適用するemulsion TERPの一連の研究において、メタクリル酸オリゴマーテルル化合物を用いて分子量が120万に達する超高分子量で分子量の揃ったポリスチレンの合成に世界で初めて成功し、その成果はPolymer Chemistry誌に受理された (DOI: 10.1039/C6PY00285D)。 2)後藤淳准教授らが開発した新たなCLRPをスチレンの乳化重合系に初めて適応し(emulsion RTCP,その有効性を学会発表した(第62回高分子学会年会)。 4)市販蓄熱剤のカプセル粒子を本研究者らがすでに提起している方法により作製し,粒子中の蓄熱材の融解並びに結晶化熱(J/g-RT27)がカプセル壁のポリマー素材により大きく異なるという、世界の常識に異を唱える実験結果を得,今後の蓄熱カプセル粒子の創製に大きな一石を投じた(Physical Chemistry Chemical Physics, 2015, 17, 1053-1059)。 3)研究代表者らの長年にわたるカルボキシル基を有する高分子微粒子に関する研究成果を整理し、科研費の成果を加味して2015年11月に中国蘇州で行われたアジア会議ASEPFPM2015において総会講演を、また、11月のタイ国で行われた国際会議TICST2015において同様の内容で基調講演を行い、成果発表に努めた。 4)研究分担者の竹内俊文教授は、重合性基を結合させた両性ポリグリセロールデンドロン(PGP)を合成して乳化重合用の重合性乳化剤として活用し、重合粒子を作製した。この粒子は蛍光を示すとともに、PGPがシェル層を形成して良好なコロイド安定性を与え、さらに、モデル薬剤としてのローダミンBをその層に担持させる多機能性高分子微粒子として活用できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
蓄熱材カプセル粒子の熱量評価において従来世界の常識とされてきた考え方の誤りを指摘、今後の同材料の開発を円滑に進めるための提言を行うことができた。ただ、世界の有力グループの強い抵抗を感じているが、本科研費研究を通じて科学技術の健全な発展のために努力を継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年は、申請書に記載した研究計画に基づき,これまでの成果を整理して成果発表を行うとともに、タイ並びに中国の研究者との国際連携の下に着実に研究を推進する。 1)Emulsion TERPについては,高分子量で分子量分布が狭く制御された重合系の確立に実験的に大きな成果をあげた前年度に続き、Emulsion TERP実験系での成功の鍵を握る事柄について詳細な理論的シミュレーション解析を行い、Emulsion TERP法の確立を目指す。そのために、工業的生産の最前線にいる企業研究者との積極的な研究討論を行う。 2)Emulsion RTCPについては、これまで国内学会3件の口頭発表内容を整理し、早期に論文発表につなげる。また、その方法を適応して分子量の揃ったカルボキシル基を有する高分子微粒子を作製し、アルカリ・酸処理法による多中空高分子微粒子の創製に及ぼす分子量の単分散化の影響について検討する。 3)昨年、蓄熱材カプセル粒子の熱物性評価に関する長年にわたる世界の研究グループが採用する誤った“常識”を指摘し、その訂正を求める論文をPhysical Chemistry Chemical Physics誌に発表した。本年度は、その問題に終止符をうつため、さらに、制御リビングラジカル重合を積極的に活用したモノマー利用収率100%でのポリメタクリル酸メチル蓄熱材カプセル粒子の創製に取り組みむとともに、実験成果に合わせて理論シミュレーション解析を行い、既成概念の打破に向けてひるまず,世界の研究グループとの論争に対応し、国際的な場での研究討論を積極的に行う予定である。 4)分子インプリンティング能を有する高分子微粒子の合成については,すでに視点を変えて表面開始制御リビングラジカル重合を適応してタンパク質認識能を有する高分子微粒子の創製に成果を上げており、本年度もその成果を発展させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年11月4-6日にタイのRajamangala Univeristy of Technology Thanyaburiにおいて開催された International Conference of Science and Technology (TICST 2015)に基調講演者として招待を受けることになり,当初予定していた学会への参加費用(飛行機代+滞在費)の支出の必要がなくなり,予算の一部繰越が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究補助員の勤務時間数を増加させるなど,支出項目を増やして当初予算を執行する予定である。
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