調節機能を水晶体ゲルの物性の観点から分子レベルで明らかにするために,水晶体の力学物性の3次元空間分布を非侵襲的に測定する方法論を確立することを目的として,本研究を実施した。主な研究成果は以下の通りである。 (1) 生体組織の「生きたままの状態」の力学物性を解明するために,高速かつ高空間分解能計測が可能な自発ブリルアン散乱光学系を共焦点顕微鏡に組み込むことで,in situ かつ in vivo条件で3次元弾性イメージングを実現する共焦点ブリルアン顕微鏡システムを構築した。水晶体の弾性率の3次元空間分布を非侵襲的にin situ & in vivo測定する方法論を確立した。 (2) 調節は,水晶体の力学物性に大きく依存しており,加齢により低下(老視)する。これまで,水晶体の力学物性は,摘出試料を用いて侵襲的手法で検討されてきたが,房水と水晶体上皮細胞との間の代謝が遮断されることによる水晶体の構造,形状の変化は,水晶体物性に対して大きな影響をもたらすにも関わらず,これまで生きた状態の水晶体の弾性率を高感度・高分解能で測定する手段が無かった。そこで,本研究では豚水晶体,白色家兎水晶体を試料として用い,上記(1)で新たに開発した測定法を用いて,非侵襲的に水晶体内の局所弾性率の測定から弾性率のマッピングを行い,調節と力学物性の相関を明らかにした。
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