1)ポリエチレンイミンと酒石酸からなるキラル錯体をテンプレートに用いることにより、キラルシリカ・ポリマーのハイブリッド体を合成し、そのキラルハイブリッド体を不斉反応場にすることで、遷移金属、希土類金属イオンが取り込ませ、それらの加熱焼成による一連のキラルシリカ・金属酸化物の合成法を確立した。 2)上記方法と類似に、不斉反応場に金属イオンを取り込ませ、その金属イオンを還元することでナノ金属(金、銀)を生成させ、キラルシリカ・ナノ金属複合体の合成方法を確立した。 3)ポリエチレンイミンと酒石酸からなるキラル錯体にテンプレートされたキラルシリカの不斉発現機構解明のため、得られたキラルシリカの水熱反応を施したところ、完全透明なゾル液を得ることを見出した。このゾルは5nm前後の大きさで、水中安定に分散した。驚くことに、このゾル液のCD測定から光学活性が確認された。従って、ポリエチレンイミンと酒石酸からなるキラル錯体にテンプレートされるキラルシリカは数ナノのクラスタレベルでキラリティが付与されたと推測される。これは従来のラセン構造に由来するキラルシリカに比べると、シリカ骨格中のキラル密度が極めて高いことを示唆する。 4)さらに、上記の1)と2)で得られるキラルシリカ・金属酸化物、キラルシリカ・ナノ金属の水熱反応から得る金属酸化物または金属ナノ粒子は、それぞれの吸収波長範囲で金属酸化物由来のCD活性、またはナノ金属のプラズモン吸収波長範囲でのCD活性を示した。このことは、キラル空間での反応を経由して生成した金属酸化物またはナノ金属に直接キラル情報が刻まれたことを示唆する。 5)キラルシリカ・希土類酸化物複合体では、発光金属イオンを母結晶体の酸化物にドープすることではなく、発光金属イオン単独の酸化物形成だけで、発光体として機能することを確認した。
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