研究課題/領域番号 |
25288060
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
遠藤 剛 近畿大学, 分子工学研究所, 教授 (40016738)
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研究分担者 |
古荘 義雄 近畿大学, 分子工学研究所, 准教授 (00281270)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 隣接トリカルボニル / 隣接ポリカルボニル / 可逆な共有結合 / ネットワークポリマー / レドックス特性 |
研究概要 |
本研究では、カルボニル基の高い反応性に由来する様々な興味深い化学的特性を示す「隣接カルボニル化合物」を基盤とする機能性高分子の創製と応用を目的としている。研究一年目である本年度は、(1)隣接トリカルボニル化合物を利用した可逆な架橋ー解架橋システムの構築と(2)隣接テトラカルボニル化合物のネットワークポリマー構築への応用について検討し、以下のような結果を得た。 (1)二官能性隣接トリケトンである1,4-フェニレンビス(フェニルプロパントリオン)1を合成し、1が無触媒下で水やアルコールが付加し、また減圧下で加熱すると水およびアルコールが定量的に脱離することを確認した。ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)のDMSO溶液に、1をPHEMAの水酸基に対してトリカルボニル部位が0.2等量になるように加え室温で撹拌すると、数時間で大きな粘度上昇が確認された。そのまま4日間撹拌し、生成した黄色ゲルをTHFで洗浄、減圧乾燥することで96%の収率でネットワークポリマーを得た。また、生成したゲルをメタノールに浸漬させ撹拌すると数時間で均一溶液となった。そのまま4日間撹拌した溶液をジエチルエーテルに再沈殿させ、不溶部を濾別することで原料PHEMAを94%の収率で回収した。同様にしてポリビニルアルコール(PVA)の1を用いることで、可逆的な架橋-解架橋も構築することが可能であった。 (2)隣接テトラカルボニル化合物(DPBT)はMeOHと室温で速やかに反応し、一付加体を与えたが、過剰量のMeOHを加えると、さらにもう一分子のMeOHが付加したニ付加体が生成することが分かった。DPBTがアルコールニ分子付加体を形成することを利用して、PHEMAの架橋反応を試みた。PHEMA (Mw = 31,000)のDMF溶液(2 M)に、水酸基に対して1 eqとなるようにDPBTを添加し、室温で24時間撹拌を行なった。反応後、DMFを除去し、残った固体を無水DMF 中で1日撹拌することで、膨潤した透明のゲルが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していた隣接カルボニル化合物の光反応については、現在までのところ、成功していない。一方で、当初は次年度に予定していた隣接カルボニル化合物を利用した可逆な架橋ー解架橋系の構築にまで到達したため「②おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
隣接するカルボニルの数を増やした隣接ペンタカルボニル化合物を合成し、水・アルコール類の可逆的付加反応や酸化還元反応を検討し、ネットワークポリマーの構築へと展開する。
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