研究課題/領域番号 |
25288061
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
壹岐 伸彦 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (50282108)
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研究分担者 |
高橋 透 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30361166)
升谷 敦子 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (10633464)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | MRI / 造影剤 / ガドリニウム / チアカリックスアレーン / 画像診断 |
研究概要 |
本研究では超高緩和性・高安定性・ターゲティング能を併せ持つ革新的MRI造影剤の設計原理をサンドイッチ型多核錯体Gd3TCA2を基体として検討する(TCA = チアカリックスアレーン).本年度は i) Gd3TCA2の1H緩和機構を解明した. まずGd3TCA2の1H緩和能r1を精査した.Gd当たりの緩和能は水溶液中では r1 = 5.8 mM-1s-1 at 20 Hz (37 °C, pH 7.4)となった.これは既存のMRI造影剤であるGd-DOTAやGd-DTPAの緩和能よりも70%ほど大きな値で実用上の高緩和能が期待できた. ついで血流イメージングを想定し,血清アルブミンとGd3TCA2との相互作用を解析した.発光性Tb3TCA2を用い会合定数をキャピラリー電気泳動で求めたところ 1.71 × 10^6 M-1 (pH 7.4)となった.これは4.5%のHSAの存在する血中ではGd3TCA2は定量的にHSAに結合していることを示している.そこで4.5% HSA 存在下で緩和能を測定したところ r1 = 5.5 mM-1s-1 at 20 Hz (37 °C, pH 7.4)となった.通常,HSAの様な回転相関時間の大きな分子に造影剤が結合するとr1は飛躍的に増大するが,増大しなかったことから,水交換速度kexが小さいことが示唆された.そこで実際に17O NMRによりkexを測定したところ1.0 × 10^4 s-1 (25 °C)となった.これは通常の造影剤の水交換速度よりも1から4桁小さな値である.これほどkexが小さいのは予想外であったが,その原因として3つのGd核と2つのTCAとの間の多重結合に基づく構造の剛直性が水交換における遷移状態エネルギーを高くしているためと考えている. 以上総合するとGd3TCA2の緩和にはGd中心の水交換は寄与しておらず,第2配位圏での水交換を通した緩和であると結論づけられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
緩和機構の決定までは順調に進んでいる.「おおむね」を選択した理由は当初計画では想定できなかったことが判明したためである.即ち,HSA存在下で緩和能r1が期待したほど増大せず,小さかったこと,さらにその原因は配位水分子交換速度kexが異常に小さかったことによる.これについては次項で述べる様にkexの小ささを活かしたイメージングモードである常磁性化学交換飽和移動法(PARACEST)の適用を検討する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
Gd3TCA2の水交換速度kexが予想外に小さく,HSA結合時の緩和能は増大しなかった.そこで当初申請における研究計画を変更し,kexの小ささを活かしたPARACESTの検討を途中に加えることとした.具体的には今後,次の3項目を検討する. ii) Ln3TCA2の利用するPARACEST能を調べる(Ln: Gd以外のランタニド):配位水に飽和パルスを照射し,バルク水のピークの減少を調べ,PARACEST能を定量化する. iii) ドナー原子の電子密度を制御し,速度論的安定性や緩和能,CEST能への影響を調査する: TCAの4個のp置換基に水溶性電子吸引基としてスルホ基(-SO3-)およびp-スルホフェニル基(-PhSO3-), 電子供与基としてt-Bu基, 電子吸引基としてニトロ基(-NO2)を導入し,これらの組み合わせによりドナー原子であるフェノール酸素の電子密度を制御する. iv) ターゲティング可能な分子でGd3TCA2類を化学修飾し,ターゲティングを実現する:腫瘍細胞表面で過剰発現している葉酸レセプター結合を目指し,葉酸をGd3TCA2に導入する.
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次年度の研究費の使用計画 |
緩和能測定,および17O NMR測定をハーバード大で行ったが,重水など消耗品は先方が提供した.また,HSA結合時の緩和能が予想外に小さいため,ラット(高額)を使用するMRI測定を行う必要がなくなった. 交換和納を引き出すための分子設計を上記ii)で計画している.これは可能な限り多様な分子設計・合成を行う必要があり,消耗品の支出が増大する.次年度使用額はここでの使用に充当する.
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