研究課題/領域番号 |
25288063
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
立間 徹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90242247)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | LSPRセンサ / 局在表面プラズモン共鳴 / プラズモン誘起電荷分離 / 金ナノ粒子 / 酸化チタン |
研究概要 |
本研究では、申請者らが見出した「プラズモン誘起電荷分離」に基づき、屈折率変化を電気信号によって、直接出力できるLSPRセンサを作製することを目的としている。平成25年度は、光電位応答および光導電率応答を電気信号として出力するセンサを設計・作製し、それらの評価を行った。 光電位応答出力型センサは、透明電極上に酸化チタンを成膜し、その上に金ナノ粒子を担持することによって作製した。作製したセンサの試料溶液中における開回路電位は、可視光を照射することで変化した。光電位応答の作用スペクトルの形状は、金ナノ粒子の吸収スペクトル(局在プラズモン共鳴吸収)に対応しており、試料溶液の屈折率を変化させると、ピークがシフトした。このことから、プラズモン誘起電荷分離に基づく電位応答を、電気信号として出力できることが明らかとなった。屈折率感度は、既存のLSPRセンサと同等であった。 光導電率応答出力型センサも作製した。その屈折率感度も、既存のLSPRセンサと同等であった。また、応答速度は、光電位応答出力型センサと比較して非常に速かった。色や濁りのある透明度の低い試料の測定も可能であった。 また、計画外ではあったが、研究を進める中で必要性が見出された以下の項目についても、進展があった。(1) LSPRセンサを作製する上で一定サイズのナノ粒子を得ることが重要なため、そのテンプレートとなるナノポーラス膜の作製法を開発した。(2) 一方で、スペクトルのピークではなく、ディップにより測定するセンサを完成させた。従来、銀ナノ粒子でのみディップを得ることができたが、金ナノ粒子でもディップを得る方法も確立した。(3) ナノセンサ開発を進めるにあたり、1粒子の電位変化をKFMにより測定する手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の大きな目的は「電位信号を直接出力するプラズモニックセンサの開発」および「電気伝導度信号を直接出力するプラズモニックセンサの開発」であり、これらを達成した。一方、研究を進める中で必要性が見出された、一定サイズのナノ粒子を得るためのテンプレート作製法、スペクトルのピークに替えてディップによる測定を可能にするセンサ、1粒子の電位変化をKFMにより測定する方法、の開発を行った。すなわち、当初の計画以上に研究は進展した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、センサの屈折率感度向上や、波長制御を可能にすべく、研究を進める。素子構造の最適化や、ナノ粒子構造の最適化を行う。ナノ粒子の構造については、たとえば長波長で共鳴し、屈折率感度が高い、異方的な形状の金属ナノ粒子を利用することも検討する。感度や応答速度向上のためには、金属ナノ粒子と酸化チタンの電気的接触の改善が重要であることがわかったので、これにも取り組む。センサのマイクロ化にも着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に電気化学測定システム(3,400千円)を購入する予定であったが、初年度は既存の測定装置で評価を行うことができたため、購入を見送り、次年度に当該助成金を繰り越した。 研究の進捗状況に合わせて、上記装置の購入を検討する。
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