研究課題/領域番号 |
25288064
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
井村 久則 金沢大学, 物質化学系, 教授 (60142923)
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研究分担者 |
永谷 広久 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90346297)
森田 耕太郎 東邦大学, 理学部, 講師 (70396430)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 絶体定量 / 環境分析 / キラル分離 / 微量化学種 / 同位体 |
研究実績の概要 |
昨今のグローバル化の進展により,あらゆる分野で化学分析の重要性が広く認識され,国境を超えて分析法の信頼性を保証する方法が求められている。研究代表者らが提案する安定同位体およびキラリティーを利用した絶対定量法は,検量線を用いずに簡便・迅速な操作で正確な定量を可能とする。今年度の主な成果は以下の通りである。1)シクロデキストリン修飾キャピラリー電気泳動(CD-CZE)によるキラル分離の解明と応用への高性能化,2)偏光変調全内部反射蛍光分光法等によるポルフィリン類の界面吸着状態の解明,3)銅の化学種分析のための新規な分離試薬およびセンシング試薬の開発と評価。 1)CD-CZEにより,エリトロ3-メトキシ-2-メチル-4-フェニル酪酸と各種シクロデキストリン(CD)との包接錯体生成定数を求めた。ベータ-CDがエリトロ体と最も安定な包接錯体を生成し,非解離のエナンチオマーでのみ,それらの生成定数に差が生じることを明らかにした。得られた定数から最適キラル分離条件をもとめ,完全分離を達成した。 2)プロトポルフィリンIXの界面吸着量や界面特異的に生成する会合体の吸着状態の電位依存性を初めて明らかにした。さらに,種々の水溶性ポルフィリンの吸着状態が非イオン界面活性剤共存下で変化することを見出した。遠心液膜法を用い,ポルフィリンのプロトン付加体および会合体形成を,共通イオンを溶解させるだけで制御できることを明らかにした。 3)7-ヨード-5-オクチルオキシメチル-8-キノリノールを新規に合成し,有機溶媒-水間の分配定数が10の7乗に達することを示した。また銅(II)の抽出定数並びに抽出速度定数を求め界面反応性を明らかにした。一方,新規な発光プローブとしてカーボンナノドットを合成し,カドミウムや鉛などの有害重金属とは反応せず,銅(II)イオンに対し迅速・高選択的に応答することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標的有機化合物である3-メトキシ-2-メチル-4-フェニル酪酸のエナンチオマーと各種シクロデキストリンとのキラル相互作用を明らかにすることができ,得られた諸定数より最適キラル分離条件を求める方法を確立できた。本研究で開発に着手した新規な界面分光計測法である偏光変調全内部反射蛍光分光法の研究が,アメリカ化学会誌に掲載され,本法が液液界面に吸着配向したポルフィリン化学種に対して,高感度・高選択的に測定できる精密状態分析法であることが認められた。さらに,種々の水溶性ポルフィリンの界面吸着状態が非イオン界面活性剤によって影響されることを見いだし,今後の応用への展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度に向けて,数種の強毒性ミクロシスチンを用いて,キラリティー利用絶対定量法の実証実験を行うとともに,新しいキラリティー計測・定量法の開発を継続する。具体的には,キラル界面会合体を用いた偏光変調全内部反射蛍光分光法によるキラル計測と定量への応用,金などの貴金属表面プラズモン共鳴を利用した高感度キラル光学測定法の開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験操作をミクロ化し,標的カルボン酸およびミクロシスチン標準品の使用量を当初予定より少なくできた。また,研究の展開に応じてキラルカラムの購入を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
標準試薬級のミクロシスチン-LR,-RR,-YRをそれぞれ複数購入予定である。また,キラルカラムを購入予定である。
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