研究課題/領域番号 |
25288065
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今任 稔彦 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50117066)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フローイムノアッセイ / コンパクトディスク型マイクロ流体 / バイオマーカー / 電気化学検出 / 蛍光検出 |
研究概要 |
本年度は研究成果は以下の通りである。 1.直径12 cmの円盤状のポリカーボネートを基板として、ポリジメチルシロキサン製のCD型マイクロチップを作製した。流路としては、半径方向に直線的に約5 cm の長さの流路を作製したものと、らせん状にして流路長さを20-30 cm程度にしたものを作製した。これらのマイクロチップの中心付近に設置したリザーバー中の溶液が流路を通して外周付近に作製したリザーバーに送液される際の流速とマイクロチップの回転速度の関係を明らかにした。溶液の流速は回転速度が約1000 rpmでは、前者の流路では約20 cm/s、後者では約10 cm/sであることが分かった。 2.CD型マイクロチップのリザーバーの中心からの位置を種々変化させ、リザーバーからの溶液の離液順序とマイクロチップの回転数との関係を調べたところ、溶液にかかる遠心力の最も大きい外周付近のリザーバーから中心付近のリザーバーの順に離液することが分かった。 3.磁気ビーズを用いるイムノアッセイ法の予備実験として、磁気表面への抗体分子の固定化法を検討し、非イオン性界面活性剤の一種であるアルキルエトキシラートを分析対象物として、同抗体を固定化し、西洋ワサビペルオキシダーゼ-ルミノール発光を利用する化学発光検出法を検討した。マイクロチップ流路に非特異的に吸着する西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗原の効率的洗浄のための送液法を開発した。すなわち、マイクロチップを間欠的に回転-停止を繰り返すことによる送液により、ほぼ完全に非特異吸着による妨害を除去することに成功した。 4.上記の検討の結果を踏まえて、アルキルエトキシラートのイムノアッセイ法をCD型マイクロチップを利用する化学発光検出法を開発した。この方法による検出下限濃度は約10 ppbであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、初期の計画の通りに、コンパクトディスク型マイクロチップの作製とこれを回転させるための回転台の作製を行うことができた。また、当初はマイクロチップの作製においては、流路を半径方向に直線的に行うことを考えていたが、実験の進行とともに流路を更に長くして、反応時間などを増加するための工夫をしている際に、新たにらせん状の流路を作製するに至った。さらに、そのような流路を流れる流体の挙動を観察するために、1秒間に1000フレームの測定が可能な高速度カメラを購入することにより、流れの可視化が可能となり、これまで困難であった液体の流速を評価することに成功している。一方、イムノアッセイへの応用については、まず、マイクロチップの回転速度に関するプログラムを作成し、パルス的に回転速度を変化させるプログラムを開発し、非特異的吸着を軽減できる方法を開発するとともに化学発光検出法が適用できることを明らかにしている。 以上のような成果が得られており、ほぼ予定通りの進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は予定通り化学発光検出法を電気化学検出法に展開する予定であり、研究計画の変更はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度CD型マイクロチップを作製している際に、基板とPDMS製マイクロチップの接着法について検討していたところ、接着力を強化するためにはプラズマによる表面処理を行った方が良いことが分かったので、次年度にプラズマ処理を行う装置を導入するために約77万円を繰り越したので、次年度使用額が0よりも大きくなっている。 次年度の交付金額が380万円であるので、本年度繰り越した77万円と次年度の交付金額のうち約100万円と合わせて、プラズマ照射装置を購入し、CD型基板とPDMS製マイクロチップとの接着性を向上したマイクロチップを作製する計画である。
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