研究課題/領域番号 |
25288069
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
長岡 勉 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00172510)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高分子合成 / 細菌 / 分析化学 / バイオテクノロジー / 先端機能デバイス |
研究概要 |
この研究では,分子鋳型ポリマ膜を利用した細菌の選択的な検出法および固定法の開発を行う。最近,細菌汚染に対する脅威が世界的に高まっている。細菌の検出には信頼性が高いとされる培養法では結果が得られるまで1~7日を要する欠点がある。従って,細菌検出をリアルタイムで行える方法の開発が急がれるなか,利用しやすい決定的な方法はまだ無いのが現状である。この研究では,申請者らが開発してきた分子鋳型ポリマに細菌の形態および表面官能基を転写し,それにより細菌の非バイオ的な迅速検出法を開発する。さらに,この鋳型膜を利用して細菌の物性測定に関する新たな方法論を展開する。 1)細菌鋳型膜の高感度化とセンサとしての機能検証 アルギン酸をドーパントとして一部ゲル化した膜を作製したが,細菌のドープ率が低下した。このため,ポリピロール膜の膜厚等の最適化を行い,ドープ率を向上させた。このことにより電極表面の鋳型数が増大し,QCM応答の感度が50%程度向上した。また,従来検討してきたポリーピロールだけでなくPEDOTを用いた細菌ドープについても検討を行い,良好なドープ率が得られた。 2)高選択的鋳型の作製 鋳型からの細菌の剥離はリゾチーム(酵素)による細胞膜破壊により行った。主にはリゾチームとの反応時間を制御して選択性を検討した。その結果,桿菌に対して脱ドープ率は70~90%であり,高精度な鋳型が作製された。顕微鏡観測により細菌が鋳型孔に捕捉される足される様子をリアルタイムで観測でき,選択性についても検討を行い,他の菌に対して鋳型細菌は4~5倍の選択性を有することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)細菌鋳型膜の高感度化とセンサとしての機能検証 この研究項目は桿菌を高密度に固定する方法の検討であるが,研究開始前より1桁程度大きいの密度が得られており,研究は予想以上に進展した。 2)高選択的鋳型の作製 細菌の鋳型作製はリゾチームなどの細胞壁破壊酵素をまず作用させてから過酸化処理を電気化学的に行った。この結果,多くの細菌が脱ドープされ,鋳型が作製された。このような簡単な方法にもかかわらず高い選択性を有する膜が作成できた。
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今後の研究の推進方策 |
1)鋳型膜の細菌固定プラットフォームとしての活用 鋳型膜はセンサとしての応用だけでなく,細菌の動態観測のためのプラットフォームとしても利用できるので,積極的な検討を行いたい。 2)単一細菌の動的測定 上記プラットフォームを活用して,単一細菌の動態を観測する。栄養などの刺激を与えた時の変化を電気化学的,分光学的に解析する。 3)鋳型デバイスの作製と選択性の検証 今年度の成果をさらに発展させる目的で,センサデバイスの開発に着手したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
蛍光顕微鏡を購入予定であったが,交付申請時と同性能のものが各要素ごとに組み立てると廉価になり,物品費が節減できた。また,国内旅費に関して,関西地区において内容が適当な学会があり,発表地を変更することで削減効果があった。さらに,当初予定よりも研究が順調に進み,期待した成果を得るための人件費も削減できた。 次年度は予定する研究の難易度が高くなり実験時間も長くなるので,主に人件費に使用したい。
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