研究課題/領域番号 |
25288071
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
加藤 大 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (80533190)
|
研究分担者 |
丹羽 修 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 総括研究主幹 (70392644)
田中 睦生 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究グループ長 (70344108)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ナノカーボン / 電気化学 / LPS / デバイス / エンドトキシン |
研究概要 |
従来、高価なリムルス試薬を必要とするlipopolysaccharide(LPS)の計測を、LPSを認識し、なおかつ電気化学活性を有する合成プローブにより、電極表面上でシグナル増幅させることで、高感度にLPSを検出する方法の実現を目的とする。このような新規計測法の性能向上を図るために、①表面が原子レベルで平坦で極めてノイズ電流の小さいスパッタナノカーボン薄膜電極の表面構造の最適化、②電気化学活性基を有するLPS認識プローブ分子の開発、③測定系の微小流路デバイス化、の3項目を中心に検討し、リムルス試薬不要な高感度LPS検出システムの実現をめざす。 平成25年度は、下記の成果を得た。 1.LPS認識分子であるポリεリジン(PL)をナノカーボン電極表面に固定化し、LPSの認識・濃縮を行う反応場を構築した。PL修飾電極上にLPSを捕捉させた後に、フェロセンを標識したLPS認識分子(ポリミキシンB)プローブを添加し、前述の捕捉したLPSに作用させ吸着させた。最終的に電極上に捕捉されたプローブ量に応じた電気シグナルを計測することでLPS定量を行った。その結果、リムルス試薬を用いることなく2ng/mLのLPSまで定量できることを実証した。従来カーボン電極(グラッシーカーボン)を用いた本測定系では、電極由来のノイズ電流の影響を受け、2ng/mLの低濃度LPSを定量することが不可能であったことから、ナノカーボン電極の有用性が実証された。 2.さらなる高感度LPS計測法の構築に向けて、フェロセンに代替し金属錯体を標識したLPS認識プローブを設計した。LPS認識分子と錯体部位の組合せを模索し、新たなLPS定量法を構築可能な新規プローブの構造に目途をつけた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリεリジン修飾ナノカーボン電極の最適化ならびに、本修飾電極とフェロセン標識LPSプローブを用いることで、従来カーボンより優れたLPS検出性能を示すことができた。以上の観点においては、当初の予定に沿っておおむね成功し論文化に至った。しかしながら、本検出系での検出感度は当初の目標濃度に到達できていない点で課題が残った。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、当初の計画通り、電気化学LPS検出を高感度化するためにマイクロ空間を反応場としたマイクロ流路デバイスの開発を行う。具体的には、①ナノカーボン膜をガラス上へメタルマスク等を利用してパタニングして成膜するためのスパッタ条件の最適化を行う。また得られた薄膜の電極性能を評価する。②パタン化電極上に着脱可能な直線型の微小流路をPDMSで形成し、これを貼り合わせることでLPS計測用マイクロ流路デバイスを試作する。作製された流路デバイスの操作性の確認、ならびに電気化学性能の評価を行う。 また、上述に加え、H25年度に提案した電気化学LPS計測システムのさらなる高感度化に向けて、新たな金属錯体標識LPSプローブの開発に注力し、LPSのさらなる高感度検出法の構築を検討する。そのためには、本プローブの精密合成と、LPSに対する結合親和性を評価する必要があり、新たに2名の研究分担者を追加する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H25年度に当初予定していた非常勤職員の採用に至らなく、H26年度に採用に至ったため、計上していた人件費を次年度使用とした。その間、H25年度は産学官連携制度による大学院生に本研究の協力を得ることができた。 H26年度に採用した非常勤職員の人件費と電気化学測定アナライザーの購入に使用する。
|