研究課題/領域番号 |
25288072
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石森 浩一郎 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20192487)
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研究分担者 |
内田 毅 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30343742)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノディスク / 生体膜モデル / シトクロム酸化酵素 / MSP / 電子伝達系 |
研究実績の概要 |
ナノディスク再構成シトクロム酸化酵素の機能評価 シトクロム酸化酵素(CcO)をナノディスクに再構成するため,サブユニット数が少なく,分子サイズがウシのCcOよりも小さいコレラ菌由来のCcOの単離,精製を行った。その結果,十分量の精製タンパク質標品を得られる培養条件および,精製条件を確立することができた。一方,ナノディスク生成用のMSPタンパク質については,その精製方法をすでに確立しており,予備的なナノディスク再構成実験を行うことができた。 Cyc-CcO電子伝達複合体の構造解析 CycからCcOへの電子伝達機構を解明するため,本年度は特に電子伝達複合体形成時における相互作用,特にその複合体の構造を決定づける疎水性相互作用に注目して検討を行った。疎水性相互作用形成の追跡は容易ではないが,疎水性相互作用形成時に脱水和が生じることに注目し,この脱水和を電子伝達反応の浸透圧効果から見積もることで,どのアミノ酸残基が,電子伝達反応における疎水性相互作用形成に寄与しているのか,同定を試みた。電子伝達複合体の解離定数の浸透圧依存性から,Cyc-CcO電子伝達複合体形成時には,約17分子の水和水が放出されることが示され,Cyc-CcO電子伝達複合体の相互作用部位の部位特異的アミノ酸置換から,ヘム近傍に位置するIle81からの脱水和の寄与が最も大きく,この残基がCyc-CcO電子伝達複合体における主な疎水性相互作用を形成すると考えられた。さらに,このIle81は酸化還元中心であるCytcのヘム近傍に位置していることから,この残基による疎水性相互作用により,CycとCcOの酸化還元中心の相対的位置が電子伝達しやすい位置関係に固定されると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノディスク再構成シトクロム酸化酵素の機能評価 シトクロム酸化酵素のナノディスク化については,再構成条件の最適化に予想より時間がかかり,予定していた構造解析については測定結果の再現性などについて問題があるため,十分とはいえない面もあった。しかし,この再現性の問題については,既に解決しており,次年度以降の実験等への影響は少ないと考えられる。 Cyc-CcO電子伝達複合体の相互作用解析 Cyc-CcO電子伝達複合体の相互作用解析に関しては,その浸透圧硬貨を用いた実験から,脱水和水分子の個数の決定やその脱水和部位の同定など,当初の予想を超える興味深い結果を得ることに成功した。 以上,本年度全体としては,ほぼ順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
シトクロム酸化酵素のナノディスク化における問題点については,再構成化条件の最適化とMSPタンパク質の精製過程にあることが明らかであり,本年度の研究の進展により,これらの点についてはほぼ解決できたと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Cytcの培養条件の改良により,その培地あたりの収量が上がり,予想よりも培地の使用量が少なくても十分な研究成果が挙げられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度はMSPタンパク質の大量精製が予想されるため,その精製費用に充当する。
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