研究課題
平成27年度も前年度に引き続き、シトクロムc酸化酵素(CcO)としてはそのサブユニット数が少なく、膜貫通面積の小さなコレラ菌由来のシトクロムc酸化酵素(VC-CcO)の大量発現、精製系の構築を試み、培養液1リットルあたり、VC-CcO精製標品1 mg程度の収量が再現性良く得られる発現・精製系を確立することができた。このようにして発現、単離、精製したVC-CcOと、既に平成26年度までにその発現、単離、精製手法を確立できたナノディスク化タンパク質MSPを用いて、ナノディスク再構成シトクロムc酸化酵素(ND-VC-CcO)の構築を試みた。種々の反応条件を検討した結果、詳細な構造解析を行うにはその収量は十分ではないものの、活性中心付近の構造解析や活性測定には十分な量のND-VC-CcO精製標品を得ることに成功した。このND-VC-CcOの活性中心であるヘム近傍の構造は、紫外・可視吸収、共鳴ラマンスペクトルなどからは界面活性剤(n-Dodecyl β-D-maltoside)で可溶化した標品(DDM-CcO)と類似していることが示されたが、ナノディスク化することで酸素分子の親和性が上昇することが示唆され、膜に埋め込まれることで生理的機能の変化が示された。一方、VC-CcOの電子供与体であるシトクロムc4(Cyt c4)についても、その発現系を構築し、活性測定や構造解析に十分な収量(培養液1リットルあたり精製標品 1.3 mg)が得られる発現、単離、精製手法を確立することができた。このCyt c4を用いて、VC-CcOへの電子伝達活性を測定したところ、ナノディスク化することにより、電子伝達活性が抑制されることが示された。このような抑制された電子伝達反応は、電子伝達反応に比べ大きな構造変化を伴う膜間のプロトン輸送との共役機構を考慮するうえで重要な知見である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochemical and Biophysical Research Communication
巻: 469 ページ: 978 - 984
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