本年度では、鎖中のヌクレオシドをすべて2'-O-MCE基が導入されたホスホロチオエート型の30量体の合成を検討した。その結果、GMPの基準を満たす高純度の目的物を得ることができた。これを用いて、国立精神神経センターの武田伸一研究室と共同研究で実際に筋ジストロフィー病のモデルマウスであるMDX52を使ってそのエキソンスキッピング活性について調べたところ、従来開発された臨床試験で検討中の2'-O-Me-RNAやモルホリノ核酸よりも極めて高い活性をもつことがわかった。この研究成果は今後の筋ジストロフィー治療にとっても重要なものである。さらに、2-チオウラシル塩基の代わりに2-チオチミン塩基を導入したものの方が、エキソンスキッピング活性がかなり向上することも見いだした。この研究成果をもとに、次の研究の展開として、糖部やリン酸部だけでなく、塩基部もさらに修飾することによって、エキソンスキッピング活性が向上することを期待して、2-チオウラシル塩基にさらに5位にプロパルギル基を導入した2’-O-メチルRNAのオリゴマーを合成した。この修飾塩基を含むオリゴマーはプロパルギル基を持たないものに比べて極めて高い標的相補鎖RNA に対して強い結合能をもつことがわかった、今後は、これらの知見を活用して、このような多重修飾したウラシル塩基を導入した2’-O-MCE-RNAのホスホロチオエート体の合成を行う予定である。 本研究の結果、我々は、極めて有望な新しい筋ジストロフィー治療薬として、ウリジン塩基の代わりに2-チオウラシル塩基を導入したホスホロチオエート型の2'-O-MCE-RNA30量体を開発することに成功した。
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