研究課題/領域番号 |
25288076
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大神田 淳子 京都大学, 化学研究所, 准教授 (50233052)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | たんぱく質間相互作用 / 阻害剤 / 化学プローブ / 中分子 / K-Rasたんぱく質 / フシコクシン / 14-3-3たんぱく質 |
研究概要 |
本研究では、中分子アンカー型たんぱく質間相互作用阻害剤ならびに検出プローブの創出を目的とする。これらの中分子サイズの合成化合物は、K-Ras変異由来難治性がんに対する薬剤開発ならびに細胞内信号伝達系の制御を司る14-3-3たんぱく質間相互作用の化学的検出法の開発に寄与すると期待する。 目標を達成するために、本年度は、まずグアニジル基含有表面モジュールと活性ポケットモジュールを改変したアンカー型化合物を種々合成し、in vitro FTase/GGTase阻害活性試験による構造活性相関を検討した。その結果、複数のグアニジル基を導入した没食子酸誘導体モジュールを、CVIMテトラペプチドの伸長配座を模倣したペプチドミメティクスに連結した化合物が、膀胱がん細胞T24中のFTase活性をnMオーダーで阻害することを見出した。このように、グアニジル基とペプチドミメティクスの応用に基づいた分子改変を通じて、中分子化合物の細胞膜透過性を顕著に改善することに成功した。 一方、PPI検出プローブの創出に向け、まず半合成的化学変換によるアミノ基含有フシコクシンJ誘導体を合成した。遺伝子改変型FC-J生産株Phomopsis amygdaliの大量培養液からFC-Jをグラムスケールで得たのち、これを出発原料として誘導体amino-FC-Jを多段階合成を経て合成した。amino-FC-Jのアミノ基にトシルエステルを含む反応性スペーサーを介して蛍光基を連結し、新規な蛍光プローブの合成に成功した。これらのプローブはリン酸化リガンド依存的に14-3-3たんぱく質を蛍光標識した。細胞実験の結果、12位水酸基を持つamino-FC-Jは無活性であった。従って、amino-FC-Jを基盤とする化学プローブは、観察対象の生細胞に影響を及ぼさない「inertな化学プローブ」となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造活性相関研究を集中的に行った成果として、当初の目的であったnMレベルの阻害活性を持つ細胞透過性中分子PPI阻害剤を得るに至った点は、今後の研究を推進する上で重要である。ただし内在性K-Rasたんぱく質を対象とした評価がまだ達成されておらず、今後の検討課題である。14-3-3プローブ開発に関しては、新規な12位水酸基含有天然物誘導体を調製できたこと、および両者を蛍光プローブへ誘導して14-3-3蛍光標識反応を確認できたので、概ね当該年度の目標は達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
PPI阻害剤に関しては、ペプチドミメティクス部位の構造改変に着手し、より阻害活性の高い化合物の探索を行う。同時にK-Ras過剰発現細胞による細胞活性評価を共同研究によって行う。従来法のWestern blotでバンドの分離の検出が困難と判断された場合には、MS/MSによるK-Rasプレニル化の検出を検討する。 PPIプローブに関しては、14-3-3蛍光標識を指標とするmode1, mode3, mode4リン酸化ペプチドライブラリスクリーニングを実施し、3者会合体形成能に及ぼす12位水酸基の効果を網羅的に検討する。また、生細胞中の14-3-3蛍光標識化を検討する。並行して蛍光偏光滴定実験で会合定数を算出し、熱力学的な考察も進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究補助1名の雇用に関し9月採用となったため。 研究補助1名を12か月間雇用するための人件費に補填する。
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