研究課題/領域番号 |
25288078
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
依馬 正 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20263626)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生体触媒 / 含窒素複素環式カルベン / 化学修飾 |
研究実績の概要 |
炭素-炭素(C-C)結合形成反応を触媒できる人工生体触媒を目指して研究を行っている。タンパク質として有機溶媒と熱に強いリパーゼを選択し、含窒素複素環式カルベン(NHC)をタンパク質連結部位(リンカー)で結合したNHC-リパーゼ複合体を創成する。NHC前駆体として特にトリアゾリウム塩を選び、リンカーを導入可能な合成経路を種々探索した。4種類の合成経路を1つずつ試していった結果、そのうちの1つだけが汎用性と利便性を備えており、得られたNHCの触媒活性も満足のいくレベルであった。この触媒はトリアゾリウム環にペンタフルオロフェニル基が直結しており、benzoin反応とStetter反応に対する良好な触媒活性を有していた。リンカーの導入に適した合成経路である。昨年度合成したものより触媒活性が高く、リンカーもいくつかの種類を選択できる。リンカーがペンタフルオロフェニル基と反対側にあることも有利である。現在はエチニル基とデシニル基を試験的に導入しているが、今後は、実際にリンカーを導入した後、リパーゼに結合させていく。一方、変異導入によりリパーゼのイソロイシン287をシステインに置換しておき、このI287C変異体をNHCで化学修飾するための方法論も検討した。NHCで化学修飾する前に、より単純な化学修飾試薬(2-ヨード-N-フェニルアセトアミド、N-エチルマレイミド、メチルスルホニルベンゾチアゾール、臭化ベンジル、2-メチルスルホニル-5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール、メチルビニルケトン)で化学修飾した。ESIマススペクトルで分子イオンピークを観測することにより化学修飾を確認した。2級アルコールの速度論的光学分割を行うと、どの化学修飾体もエナンチオ選択性や触媒活性が変化したことより目的の位置に化学修飾できていると判断した。この知見に基づいて今後、NHCの化学修飾に適した連結方法を選択し、実際にリパーゼにNHCを結合させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トリアゾリウム塩の合成が非常に難しく難航した。リンカーの導入に適した合成経路を開拓するために時間を要したため、予定より少し遅れている。リパーゼの化学修飾法は種々検討し、ノウハウが蓄積しているが、リパーゼにトリアゾリウム塩を結合できていないため、予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
トリアゾリウム塩の合成法はほぼ確立できたので、今後は、リパーゼに変異導入したシステイン残基と特異的に反応するリンカーを有するトリアゾリウム塩を合成し、実際に人工生体触媒を創成する。そして、その触媒活性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、ほぼ予定通りの金額を使用したが、平成25年度の繰り越し分(474,242円)がそのまま繰り越す形となった。基金なので、無理に使用せず、次年度に繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
学生数が増えるため物品費(試薬購入費)も増えると予想する。研究成果が出るように有効に使用する。
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