研究実績の概要 |
炭素-炭素(C-C)結合形成反応を触媒できる人工生体触媒を創成する。具体的には、有機溶媒と熱に強いタンパク質としてリパーゼを選択し、有機触媒活性を有する含窒素複素環式カルベン(NHC)を結合させたNHC-リパーゼ複合体を創成する。今回、ペンタフルオロフェニル基を有するトリアゾリウム塩(NHC前駆体)とリン酸エステル(リンカー部位)が連結した化合物を得る合成経路を確立した。まずクロスカップリングできるようにヨウ素を導入したトリアゾリウム塩を合成し、一旦還元してトリアゾリンとした。その後、園頭カップリングによりエチニル基を導入した後、Huisgen反応によりリン酸エステル部位を連結させた。銅配位子としてよく用いられるtris[(1-benzyl-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl]amineやtris(2-benzimidazolylmethyl)amineでは反応しなかったが、小さな配位子であるdimethylethylenediamineを配位子として用いたところ、室温30分で反応が完結した。その後、トリチルクロリドを用いてトリアゾリンを酸化してトリアゾリウム塩に戻した。最後に、リン酸緩衝液(pH 7.0)中、NHC-リン酸エステルとCandida antarctica lipase B (CALB)を室温1時間撹拌することにより、NHC前駆体が(リン酸エステルを介して)リパーゼ活性中心に導入されたハイブリッド人工生体触媒を創成した。ハイブリッド人工生体触媒の生成は、透析とスピンカラムによって精製した後、ESI-MSスペクトルから確認した。
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