研究課題/領域番号 |
25288079
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
王子田 彰夫 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10343328)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 蛍光プローブ / センシング / 金属イオン / 硫化水素 / バイオイメージング |
研究概要 |
本年度は、まずAMコンタクト機構における蛍光波長変化機構について密度汎関数法を用いて計算科学からの理論的解釈を試みた。その結果、AMコンタクト現象では、1)近接する金属イオンと蛍光団との静電相互作用が重要な因子であること、2)金属イオンと最近接するキサンテン蛍光団9位の炭素原子上のLUMOのエネルギー順位がHOMOに比べて、よりエネルギー的に安定化されるため蛍光波長の長波長化が引き起こされることが推測できた。 一方で、AMコンタクト機構により蛍光波長シフトを誘起する金属イオン種の拡張を目指して、環状構造のリガンド部位を有する蛍光プローブと金属イオンとの相互作用についての探索を進めた。その結果、15員環のアザクラウンリガンドを持つ蛍光プローブが銀イオン選択的な大きな蛍光波長シフト(34 nm)を起こすことを見いだした。銀イオン錯体のX線結晶解析を行ったところ銀イオンが最近接するキサンテン蛍光団9位の炭素原子と2.46オングストロームの距離で非常に近接していることが明らかとなり、銀イオン錯化に伴う蛍光波長の長波長化はAMコンタクト機構により生じていることが強く示唆された。 さらに、本年度ではAMコンタクト機構を示す蛍光性カドミウム錯体を用いて細胞内在性の硫化水素のレシオ検出について検討を進めた。はじめに蛍光プローブの構造最適化を試みたところ、ローダミン型の蛍光性カドミウム錯体が高濃度グルタチオンによる影響を受ける事無く、大きなレシオ変化で硫化水素を検出できることを見い出した。また、本プローブを細胞内に導入するためアルギニンリッチペプチドとピレンブチレートを用いた細胞内導入法を新たに確立した。 さらにHUVEC細胞へ蛍光性カドミウム錯体を導入して細胞を刺激したところ、酵素によって産生された細胞内在性硫化水素の生成を蛍光レシオ検出することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計算科学的手法によるAMコンタクトの理論的解釈を示すことができた。環状型リガンド型プローブによるAMコンタクト機構に基づいた銀イオン選択的な検出の達成は、当初予想出来なかった興味ある現象を含む成果である。また、蛍光カドミウム錯体を用いて内在性の硫化水素の検出に成功したことは、予想以上に進捗の早い成果である。
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今後の研究の推進方策 |
環状型リガンド型プローブの分子デザインにさらに工夫を取り入れて、当初の目標であるAMコンタクト機構により蛍光波長シフトを誘起する金属イオン種の拡張を目指す。また、細胞内硫化水素検出型プローブについては、アルギニンリッチペプチドとピレンブチレートを用いた細胞内導入法を用いることなく細胞膜を透過できる利便性と汎用性に優れた蛍光プローブの開発を目指し、新たなプローブデザインと機能評価を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は、蛍光プレートリーダーを購入する予定であったが、予想以上に消耗品費用が嵩み購入を断念したため次年度への繰越し金が生じた。 物品費(主に消耗品費)として使用予定。
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