研究課題/領域番号 |
25288084
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐伯 昭紀 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10362625)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機太陽電池 / マイクロ波分光 / 時間分解評価 / 白色光 / 周波数変調 / 共役高分子 |
研究実績の概要 |
デバイスレスXe-flash TRMCシステムを駆使して、高効率太陽電池実現のための新たな材料設計・合成を行った。ベンゾビスチアゾール(BBTz)は、通常はアクセプターユニットとして認識され、近年、CPDTなどのドナーユニットと組み合わせた共重合体が報告されている。しかし、その変換効率は1~3%程度に留まっている。そこで、BBTzとベンゾビスチアゾール(BT)あるいはフッ素化BTからなる高分子を合成し、TRMC測定並びに太陽電池評価を行った。BBTz-BT高分子では、昨年度では3.8%の変換効率に留まっていたが、デバイスレス評価を基にデバイス構造を検討することで、6.5%に急上昇させることに成功した。さらに、通常は溶媒プロセスに添加剤が必要なところを、BBTz-FT高分子では添加剤なしで高い変換効率(6.4%)ができることを見出した。 また、マイクロ波分光法の深化に向け、GHz周波数変調測定システム(FM-TRMC)を新たに構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題では、研究者らが開発したXe-flashによる高性能なデバイスレス太陽電池評価システムの構築を主たる目的としている。初年度にすでにそのような高分子を見出し、さらに2年度にはデバイス構造へのフィードバックに成功し、変換効率向上に大きく寄与できることを実証した。同時に、通常のマイクロ波周波数(9 GHz)に加えて、高周波数(15, 23, 34 GHz)の回路を設計・開発し、GHz周波数変調測定システムを構築した。これまでの評価では実部のみに着目して電荷キャリア移動度評価や太陽電池開発に利用してきたが、申請者は実虚部から成る複素伝導度を上述のGHz周波数変調法と組み合わせることで、電荷キャリアのトラップ密度と深さに関する情報を得る手法を新たに開発した。 このように、計画は1~2年程度前倒しで順調に実現している。3年目以降は、さらなる高効率材料の開発を展開する。
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今後の研究の推進方策 |
初年度中に高性能デバイスレス予測診断システムの大まかな枠組は完成した。2年目には材料開発へ応用し、高効率・新規高分子の開発に成功した。また、2年目に開発に成功したFM-TRMCを用いて酸化チタンナノ粒子を評価したところ、他の有機材料と比べて3倍以上大きい伝導度の虚部成分(共振周波数のシフトに相当)が観測され、しかも時間とともに虚部成分が減少する現象が観測された。そこで、独自に構築したDrude-Smith-Zenerモデルを用いて実虚部比の周波数分散を解析したところ、電荷キャリアトラップの深さと密度を得ることに成功した。伝導度のアレニウスプロットの傾きから得られる活性化エネルギーからもほぼ同等のトラップ深さが得られており、周波数・実虚部・時間・温度から多面的に電荷分離・輸送過程メカニズムを調べる手法を確立した。この周波数変調の結果と併せることで、有機薄膜太陽電池の性能をデバイスレスで、トータルに診断できるシステムの構築が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
4月の非常勤職員給与、および招へい研究員滞在費に充てるため。
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次年度使用額の使用計画 |
非常勤職員給与(4月、30万円)、招へい研究員滞在費(4-5月、35万円)
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