研究概要 |
平成25年度は、アルキル基末端にBr基を有する重合性尿素化合物N,N'-(3,4,5-trialkyloxyphenylureaの合成と垂直配向膜の作製および強誘電性の確認を行い、SHG(第二次高調波発生)測定システムの制作と分極反転の測定を行った。 1)ピロガロールを原料として、アルキル基末端にBr基を有する重合性化合物N,N'-bis(3,4,5-trialkyloxyphenyl)urea(Br6-Urea)の合成に成功した。2)化合物Br6-Ureaの偏光顕微鏡観察を行ったところ、樹状組織が観測され、カラムナー相であることが確認できた。その異方性から、矩形カラムナー相であることが判明した。3)化合物Br6-Ureaの示差熱分析を行ったところ、結晶相-液晶相の転移と、液晶相-等方相の転移が観測された。偏光顕微鏡観察と一致する結果となった。4)液晶化合物Br6-Ureaの1次元X線回折では、矩形カラムナー相を示すピークが観測され、2次元X線回折では、カラム間の領域に臭素が密集して存在していることが見いだされた。5)液晶化合物を透明電極と配向膜を有する液晶セルに入れ、液晶状態において、三角波電圧を印加し、電流の分極反転ピークを測定した。Br基の脱離に伴い、Br基の動きを示すピークが減少し、閾値を有する強誘電性のピークが観測されるようになった。6)(株)ラムダビジョンと共同で、SHG測定システムを開発することに成功した。7)SHG測定システムを用いた強誘電性の確認に成功した。末端にBr基を持っていない化合物Ureaについて電圧をON-OFFさせることで、SHGがON-OFFすることを確認した。また、電圧を反転することで、分極を反転させ、SHG干渉により分極反転を確認できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)Br6-Ureaの合成については、最適な条件を見出している。2)重合前の液晶の超構造については、一次元と二次元のX線回折から、その超構造が確定しつつあり、通常のカラムナー相とは異なる構造を持っているように思われる。電極間の交流下と直流電圧の両方において、ポリマー化の進行が確認された。直流下でポリマー化したものは明瞭な回折ピークが得られないことから、より良好な重合条件を探索する必要がる。3)電場印加実験は、再現性が取れており、重合により、閾値を有するスイッチングが観測され、2安定状態を示す強誘電性であることが判明している。4)SHG測定システムでは、(株)ラムダビジョンと共同で、顕微SHG測定システムを作り上げ、プログラム・ホットステージの改良や光学系の調整により、有機物のSHGを温度制御下で測定できるようになった。熱に不安定なサンプルについては、長時間赤外レーザーを照射すると、サンプルが分解しSHGが発生しなくなることがあるが、N,N'-(3,4,5-trialkyloxyphenylureaについては、SHGのシグナル発生並びに分極反転を確認できるようになった。5)ポリマーシートの作成についても、ガラス状に塗布したサンプルに、130℃で直流電圧(5kV)を印加することで、成功しているが、再現性良く、一定の膜厚のシートを作る方法を検討する余地が残っている。 これらの事項は、計画書や交付申請書に記載した初年度の目的であり、おおむね順調に進展していると判断できる。
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